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「今、とにかく二人が大好き。どうしょうもなく大好き……　苦しくて駄目……」
　報復計画を中断なんてできない。
「もともと報復なんてどうしてしようと思ったのかしら？　こんなに好きな二人なのに……」
　親子とは在学中に決定的な絆を築くしか道はない。彼女は改めて決心した。

　　　*

　数日後、恵美は浩志の匂いを嗅がないようにするため鼻栓をすることを思い付いた。嗅ぎ過ぎると失神して気絶する不安があったからだ。直径7ミリほどの脱脂綿を鼻の中に押し込んだ。手鏡を取り顔を見つめる。鼻が左右に開いて変な顔だ。
「学園のアイドルが何をやっているのかしら？」
　彼女はたびたび自己嫌悪する。畑野親子に会ったせいで日常的に変な行動ばかりしていた。彼女はそのひどい顔を見られないようマスクで覆った。
「もう、こんなふうになったのも、みんな勘太郎のせいだわ。やっぱり許さないわ、報復あるのみよ……　勘太郎……　ああぁ勘太郎……　あぁあーー　あの、くそ、くそ、くそ、くず、くず男めぇー　あぁ……　もうぅー　いつかきっと、ぐちょぐちょに、けちょんけちょんにしてやるぅー　待ってなさいよ、勘太郎ぅーーー　わたしを待っててくださいぃーー　お願いですぅーー」

　　＊

　9月がもうすぐ終わってしまう。恵美は勘太郎に全く会えないでいた。浩志と恵美は共同研究を続けながらすっかり二人の心も通い合う間柄になっていた。浩志に自分をレイプさせる計画はほぼ恵美の脳内から消えていた。
　なぜなら、自分が浩志をレイプしないように注意していたためすっかり忘却していた。恵美は呼吸が苦しくなると、時々片方の鼻栓を少し外してからマスクをした。そんな少しの時間だけ浩志の体臭を嗅いだ。彼女は浩志の存在で満たされ癒やされた。
「この人の隣にいればいつでもわたしは幸せになれるのね」
　彼女はマスクで隠しながら鼻栓を元に戻した。