
幸せな報復
第20章 夏が終わって
本来なら、こんな時こそエルザの“攻撃的なアイデア”が背中を押してくれたはずだった。そうして何度も難局を乗り越えてきた。うまくやってきたはずだった。それが分裂した。一人で解決するしかない。
真面目な浩志をどうやって惑わせ、どんな言葉で理性を崩し、どうやってこちらに振り向かせるか。
以前の“わたしたち”なら、その道筋はすぐに浮かんできたはず。
「浩志くんが……そそりそうなポーズって、どんな……感じ? いや、普通の男の子とは違う……。彼は特別な子……」
気がつけば、恵美は声に出していた。
胸の奥で、自嘲とも諦めともつかない笑いが湧く。
ポケットに突っ込んだメモ帳は、白紙のままだ。
深く息を吸い、吐き、また吸う。何度か繰り返すうちに、心臓の鼓動だけが部屋の静寂に異様に大きく響く。
まぶたを閉じたその暗闇の中でも、エルザの声は、遠くでくすくすと笑っている。
(……これって本当に、わたしの声? それとも、まだ“夢”の中……?)
真面目な浩志をどうやって惑わせ、どんな言葉で理性を崩し、どうやってこちらに振り向かせるか。
以前の“わたしたち”なら、その道筋はすぐに浮かんできたはず。
「浩志くんが……そそりそうなポーズって、どんな……感じ? いや、普通の男の子とは違う……。彼は特別な子……」
気がつけば、恵美は声に出していた。
胸の奥で、自嘲とも諦めともつかない笑いが湧く。
ポケットに突っ込んだメモ帳は、白紙のままだ。
深く息を吸い、吐き、また吸う。何度か繰り返すうちに、心臓の鼓動だけが部屋の静寂に異様に大きく響く。
まぶたを閉じたその暗闇の中でも、エルザの声は、遠くでくすくすと笑っている。
(……これって本当に、わたしの声? それとも、まだ“夢”の中……?)
