
幸せな報復
第25章 御手洗貞子
あいつは、これまで悪行の証拠を一切残していない。単なる暴力だけではない。巧妙かつ知的な計画を立て、その計画どおりに悪事を実行して、街の支配者として君臨してきた。まさに、悪知恵の働く怪物だ。
ただ、行政の責任者になるには、法律に基づいた手続きを経て、正式なポストに就かなければならない。そうでなければ、本当の意味で街の支配者にはなれないはずだ。
あいつは、正式な権限を持ってポストに就いた人間を、力で脅しているだけの暴力男に過ぎない。あいつ自身には、何一つ権限がない。ただの木偶の坊だ。
ここが、あいつの弱点だ。
あいつを攻撃する突破口は、ここしかない。
いや……。
そもそも、あの海星に法律の力など必要ないのかもしれない。あいつの頭には、「法律で決められていることでも、暴力でねじ伏せればいい」という考えしか浮かばないのだ。
なんて恐ろしい、単純な怪物なのだろう。
沢子の、家族を失った喪失感は、七年という歳月を経ても癒えることはなかった。
家族四人も殺されたのだ。そう簡単に立ち直れるはずがない。
「わたし、怖いわ……。総次郎なら、何かいい方法を考えてくれるかしら……」
貞子は、不安そうに呟いた。
「総次郎は長い間、海星とビジネス関係で付き合ってきた。今だって、その関係は続いているでしょうね……」
そう考えると、さらに不安になる。
「その総次郎が、海星と仲違いしてまで、わたしを助けてくれるかしら……。総次郎は、海星の悪行を知っているはずよ。でも……だからこそ、あの人が海星と争うとは思えないわ」
貞子には、それが一番の心配だった。
――総次郎に頼ることが、本当に正しいのだろうか。
そんな思いが、頭から離れなかった。
一方、総次郎と貞子が出会った当初のことを思い返せば、二人の関係は決して深いものではなかった。
貞子は、総次郎を好きになって結婚したわけではなかった。
自分を目当てに店を訪れ、いつも必ず指名してくれることは分かっていた。
総次郎は、妻を亡くしてから十年間も独身だった。妻一筋だった男が、貞子に会いに来るようになったことは、周囲の人間も知っていた。
ただ、行政の責任者になるには、法律に基づいた手続きを経て、正式なポストに就かなければならない。そうでなければ、本当の意味で街の支配者にはなれないはずだ。
あいつは、正式な権限を持ってポストに就いた人間を、力で脅しているだけの暴力男に過ぎない。あいつ自身には、何一つ権限がない。ただの木偶の坊だ。
ここが、あいつの弱点だ。
あいつを攻撃する突破口は、ここしかない。
いや……。
そもそも、あの海星に法律の力など必要ないのかもしれない。あいつの頭には、「法律で決められていることでも、暴力でねじ伏せればいい」という考えしか浮かばないのだ。
なんて恐ろしい、単純な怪物なのだろう。
沢子の、家族を失った喪失感は、七年という歳月を経ても癒えることはなかった。
家族四人も殺されたのだ。そう簡単に立ち直れるはずがない。
「わたし、怖いわ……。総次郎なら、何かいい方法を考えてくれるかしら……」
貞子は、不安そうに呟いた。
「総次郎は長い間、海星とビジネス関係で付き合ってきた。今だって、その関係は続いているでしょうね……」
そう考えると、さらに不安になる。
「その総次郎が、海星と仲違いしてまで、わたしを助けてくれるかしら……。総次郎は、海星の悪行を知っているはずよ。でも……だからこそ、あの人が海星と争うとは思えないわ」
貞子には、それが一番の心配だった。
――総次郎に頼ることが、本当に正しいのだろうか。
そんな思いが、頭から離れなかった。
一方、総次郎と貞子が出会った当初のことを思い返せば、二人の関係は決して深いものではなかった。
貞子は、総次郎を好きになって結婚したわけではなかった。
自分を目当てに店を訪れ、いつも必ず指名してくれることは分かっていた。
総次郎は、妻を亡くしてから十年間も独身だった。妻一筋だった男が、貞子に会いに来るようになったことは、周囲の人間も知っていた。

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