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幸せな報復

第25章 御手洗貞子

「会長、いい人が見つかってよかったですね」

 総次郎に近い人間たちは、笑顔でそう挨拶することが増えていった。

「おお、そうかもな」

 総次郎も、まんざらでもない様子だった。

 そんな会話を、貞子も何度か耳にした。

 悪い気はしなかった。

 何しろ、総次郎は店にしっかりお金を落としてくれる上に、品のいい客だった。接客していても、嫌な気分にはならない。

 当時の貞子にとって、総次郎は――

「上得意のおじいさんを、大事にしなくちゃ」

 その程度の認識だった。

 ところが、総次郎のほうは、どうやらそれだけではなかったらしい。

 店の女の子が総次郎の隣に座り、彼に擦り寄っていくと、総次郎は決まって、少し離れた席にいる貞子をちらりと見た。

「すまん。貞子さんが見ているから、あまり近づかないでくれ……」

「あの人、また、あんなこと言ってる……」

 貞子は、そんな総次郎の様子を見て、首を傾げていた。

 ――あんなおじいさんが、私の何を気に入ったのかしら。

 その理由は、貞子にはまだ分からなかった。

 ただ、店にお金を落としてくれる。

 品もいい。

 そして、彼を接客していると、不思議と楽しい。

 当時の貞子には、それだけで十分だった。

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