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幸せな報復

第25章 御手洗貞子

 彼女にとって、総次郎は人畜無害な上得意客だった。

 店のスタッフから、かなりの財産を持っているらしいと聞いていた。そのため、貞子が彼に対して気にしていたのは、もっぱら財布の中身だった。

「まあ、こんな財布みたいなおじいさんに好かれるなんて……ほんと、光栄だわ」

 貞子はその程度に考え、総次郎に接していた。

 そんな彼女に、ある日、総次郎が求婚してきた。

 いつもそっけない態度を取っていた相手から突然求婚されたのだから、貞子もさすがに戸惑った。

 けれど、頭の中には別のことが浮かんでいた。

 ――結婚したら、彼の何十億という財産が相続できる。

「えぇっ? うそでしょ? わたしでいいの?」

 驚きながらも、貞子にとって、この結婚に損はなかった。

 むしろ、いいことづくめだ。

 まさか自分が「玉の輿」という言葉を使う日が来るなんて、思ってもいなかった。

「わたしだって、いつか玉の輿に乗ってやるんだから。見てなさいよ!」

 貞子は、自分を捨てて去っていった男たちの背中に、何度そう叫んだことだろう。

 ところが、結婚してみると、総次郎は貞子に驚くほど優しかった。

 その優しさに触れるうち、貞子は初めて男を好きになった。

 ――彼と結婚したから、好きになったのかしら?

 そんなことを考えることもあった。

 貞子の家庭は、決して経済的に恵まれていたわけではない。

 だからこそ、総次郎との結婚は、彼女の人生を大きく変えるものだった。

 そんな貞子のもとへ、宗男が沢子母娘を連れてきた。

「俺は腕力じゃ海星にはかなわない。けど、知恵を絞って、沢子さん母娘を絶対に守ってみせる」

 宗男は真剣な顔で言った。

「だから……とにかく、しばらく二人を匿ってほしい。俺は沢子さんを守りたいんだ」

 貞子は、宗男の言葉を信じた。

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