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幸せな報復

第25章 御手洗貞子

 気が利くうえに、この顔立ちだ。
 女たちから評判がいいのも無理はない。

 貞子は、改めて宗男の顔を見つめた。

 そして、他の者には聞こえないよう、少しだけ身を寄せる。

「ねえ、宗男」

「はい?」

「沢子さんたち……これから、どうするつもりなの?」

 宗男は磨いていたグラスから視線を上げた。

 ほんの一瞬、手が止まる。

「そのうち……国外へ逃げてもらいます」

「国外へ?」

「ええ」

「どこの国へ?」

 貞子が尋ねると、宗男は少し考えるように視線を伏せた。

「まだ、特定の国までは決めていません」

「そう……」

「海星の息が掛かっていないところなら、どこでもいいと思っています」

 そう言って、宗男は再びグラスを磨き始めた。

「あら……そうよね」

 貞子は小さく息を吐いた。

「日本にいる限り、落ち着いて暮らせないものね」

「……そうですね」

 宗男はそれ以上、何も言わなかった。

 貞子はグラスを見つめながら、昨夜のことを思い返していた。

 あのとき、自分は沢子がけだもの族だとは知らなかった。

 もし、あの時に知っていたら――。

「……知っていれば、助けを求めてもらえたかもしれないのに」

 思わず、声に出していた。

 今さらながら、胸の奥が痛んだ。

 しかし、ふと気づく。

 あの時、沢子がけだもの族であることを宗男は知っていた。

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