幸せな報復
第15章 接近する恵美
「あー いてぇーよぉー 腕が抜けちまうー おれをどうするんだぁー」
彼は女の背中に向けて声にならない声で必死に声を掛けたが前を向いたままだ。大の男がまるで子どものような扱われようだ。彼は無力感と絶望感で目から涙をこぼし始めた。
「お姉さーん、勘弁してー もうしないからぁー」
彼はこの女の異常な行動から警察に突き出されることはないと感じはしたが、一体、この女は自分をどうするのか、別の意味で彼は新たな恐怖を感じ始めた。行き交う周囲の人間が好気な目を二人に向けた。
「ねえ、あの人たち、どうしたのかしら? 病気なの? 男の人は歩けないみたい…… 女の人が引っ張ってあげてるもの」
「いやいやー 病人な訳ないでしょ、あのきれいな人、容姿に似合わず大胆よね。男の人、元気そうよ、引きずられながら足をバタバタしているもの」
「あはーっ もしかして…… たで食う虫も好き好きってヤツ? ぱっとしない感じの男だもの…… あいつが彼女を裏切ったのよ」
「うーーん だよね? 二股掛けそうな顔だもの? それにしてもさ…… あの人、よほどいいのよ、顔以外のどこかが……」
「……」
周囲の人間に男を助ける気持ちはない。なぜなら、絶世の美女が風采の上がらない男を引きずっていたからだ。あつあつカップルとはどうやっても見えない。だれが見てもただならない、曰く付きの関係であることは歴然だ。見ているだれもが悪いのは男しか考えられなかった。実際のところ、どちらも最悪なのであるが。
「あの人の何がいいのかしら?」
「やだわー?」
「フフフ、ホント、やだー こっちが恥ずかしくなるわぁー」
二人は周囲の通行人から好き勝手な憶測を言われ放題だった。だが、周囲のいろいろな声が聞こえるほど男に余裕はなかった。女も初めての掟の儀式を遂行中だったので緊張から耳に入っていない。
彼は女の背中に向けて声にならない声で必死に声を掛けたが前を向いたままだ。大の男がまるで子どものような扱われようだ。彼は無力感と絶望感で目から涙をこぼし始めた。
「お姉さーん、勘弁してー もうしないからぁー」
彼はこの女の異常な行動から警察に突き出されることはないと感じはしたが、一体、この女は自分をどうするのか、別の意味で彼は新たな恐怖を感じ始めた。行き交う周囲の人間が好気な目を二人に向けた。
「ねえ、あの人たち、どうしたのかしら? 病気なの? 男の人は歩けないみたい…… 女の人が引っ張ってあげてるもの」
「いやいやー 病人な訳ないでしょ、あのきれいな人、容姿に似合わず大胆よね。男の人、元気そうよ、引きずられながら足をバタバタしているもの」
「あはーっ もしかして…… たで食う虫も好き好きってヤツ? ぱっとしない感じの男だもの…… あいつが彼女を裏切ったのよ」
「うーーん だよね? 二股掛けそうな顔だもの? それにしてもさ…… あの人、よほどいいのよ、顔以外のどこかが……」
「……」
周囲の人間に男を助ける気持ちはない。なぜなら、絶世の美女が風采の上がらない男を引きずっていたからだ。あつあつカップルとはどうやっても見えない。だれが見てもただならない、曰く付きの関係であることは歴然だ。見ているだれもが悪いのは男しか考えられなかった。実際のところ、どちらも最悪なのであるが。
「あの人の何がいいのかしら?」
「やだわー?」
「フフフ、ホント、やだー こっちが恥ずかしくなるわぁー」
二人は周囲の通行人から好き勝手な憶測を言われ放題だった。だが、周囲のいろいろな声が聞こえるほど男に余裕はなかった。女も初めての掟の儀式を遂行中だったので緊張から耳に入っていない。