クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜
第10章 ムーンブレイド
上空を数機のジムⅢに取り囲まれ、見ると地上の湖岸にも見受けられる
モニターに映し出されたアルメニア連邦軍の勇姿を見てマリナは高笑いする
「早速詰んでるじゃないのッ!?
連邦軍の一個中隊の数だよッ!
アンタらのわけわからない機体ひとつで何が出来るってんだいッ!?」
ジェフリーもさすがに驚きを隠せない
たかだか生身のバイク逃走にモビルスーツまで持ち出し、地下に潜ってるあいだに十数機のモビルスーツ中隊に包囲されていたのだ
友軍の姿は当然なく、孤立無援の状況だった
「おい、キアラ?さすがにやべぇんじゃねぇか」
するとキアラは無表情で正面のモニターを見つめていた
「ジェフリー?何がヤバいって???
まだ何もしちゃいないじゃない?
哀れな蚊トンボとゴキブリが増えたから何だってんの? まぁ、ちょうどいいんじゃない?
上空でオーロラも見ているみたいだし、デモンストレーションには、さ?」
余裕そうな口ぶりを見せるキアラはたいしたことないとでも言いたげだ
案の定、上空からと地上から同時に集中砲火を浴びる
衝撃で揺れ動くコクピットルーム
「うぉッッ!??」
「きゃあッッ!!」
軍人のオトナふたりが思わず声をあげてしまうほどの衝撃だ
「素っ頓狂な声を出さないでよ、ふたりとも
なんてことないわよ、ビーム砲ごときでは
なんならバリアに弾かれて当たってすらいないのよ? ただのバリア外の衝撃で揺れてるだけよ!当たり前じゃない、水の上に浮かんでいるだけなんだから!
でも、そうね、せっかくなので地上に上がってみようかしら?」
キアラがタッチパネルを操作するといくつかのモード画面が現れてそのひとつを選択する
横目でちらりと見ていたジェフリーは画面の中に映る機体の姿が「蜘蛛」のように見えた
それは中心から数本の長い手足が伸びた異様な姿
まさしく蜘蛛のようなフォルム
連邦軍も一斉射撃を中断して警戒態勢をとっている
皆が見つめるなか、ムーンブレイドの機体から何本もの「脚」が突出して、それらがワシャワシャと不気味に動き始めた
「さて、上陸しますか」
キアラは笑顔だった
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