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クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜

第11章 眠り姫


猛吹雪の夜、

凍てついた滝のそばに簡易テントから灯りが漏れる

中には2人の兵士が食後の熱い珈琲を楽しんでいた

ひとりは居残りを買って出たトラビス

もうひとりは後から物資を運んできた少年兵アトキンスだ


「雪の中荷物を運んできてもらって悪かったね、アトキンス
 おかげで助かったよ、こんな熱い珈琲まで用意してくれて、気が利くね?
 今夜は外で雪に埋もれる覚悟だったから」


「お安い御用です、トラビスさん!
 どうせおいらなんて軍隊の中では役立たずなもんで…、荷物運びくらいしか能がないんだ
 念のためと思って持って来たキャンプ用品みたいな簡易ストーブてしたが正解でしたね
 テントの中があったかくなってきました

 トラビスさん、頭まで隠して着込んでられますが……暑くないですか?」


アトキンスがジープで持ち込んだテント用のストーブは下部がカマドのようになっていて木材を投げ入れられ、その上には調理器具を乗せられるようになっている

火をくべながら調理も出来、一石二鳥だ
ふたりは先ほどもレトルトのシチューをたいらげ、今はケトルで湯を沸かす

その蒸気もあってテント内は蒸し暑いぐらいなのだ


「……たしかにちょっと暑いかな?
 うーん、ちょっと驚かせてしまうかもしれないと思って顔を隠していたんだけど…、
 仕方ないな」


「なんです?顔に火傷の跡でもあるんですか?
 それぐらいで驚きはしませんよ!
 ボクだって前線で負傷した跡ぐらいあります」


トラビスは返事はせず帽子を脱ぎ、目出し帽を首から勢いよく抜き取る

そこからはふぁさ、と長い金髪がこぼれててきた


「え…?」


少年兵アトキンスは目を見開いて驚いた


目の前に居てる先輩将校は金髪の女性だった!


「えっ!? あ、あ???」


「そんなに驚かなくっても……、わかりやすいねアトキンスは
 残念ながら火傷の跡も負傷した傷跡もないよ」


ニッコリと笑った女性兵士トラビスに大袈裟に驚く少年兵アトキンス
 まさか目の前の先輩将校が異性だとは露ほどにも思っていなかった

どおりで顔すべてを目出し帽で隠し、声もわざと低く抑え気味に話してたのだ


「この事は誰にも言っちゃあダメだよ?」


トラビスはその長い金髪を後ろで束にしてまとめようやくリラックス出来たのだった……



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