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クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜

第11章 眠り姫


トラビスは珈琲をすすりながらテントが透明になっている窓代わりの部分をめくって外を覗く


その様子をアトキンスは興味深そうに眺めている
彼女はゴツゴツに着込んでいるのでその小さな顔がさらにコンパクトに見える

「ト……トラビスさんは何の任務に就かれているのですか? えっと、訊いたらマズイですよね?秘密任務っぽいし……」


トラビスは視線は逸らさず外を眺めたままだ


「まぁ、付き合ってもらってるんだから目的ぐらいは話しておこうか?
 もちろん隊に戻っても漏らさないのが条件だよ?

 我々トルコ軍の今回の作戦は立てこもったアルメニア軍の排除でしょう? 昨日鉱山に仕掛けた爆弾でその目的はほぼ達成できたわけなんだけど、

 その爆発で斜面の反対側の此処でちょっとした発見があってね

 私はその発見物を監視しているのよ」


アトキンスも彼女の肩越しから透明なシート部分を覗いてみるが、周りは猛吹雪ばかりで変化があるのか、何も変わっていないのか、まるでわからない


「見えない? 滝の横の崖の部分…、
 崩れて岩がむき出しになっている箇所があるでしょ?そこに金属らしい物体が埋まってるのよ

 それが私の役目なの」


アトキンスは言われてから何度も凝視してみるが吹雪のせいなのか、自分が鈍感なのか、何も見えなかった


「そ、その埋まっているモノを誰かが奪いに来るってんですか? この吹雪のなかでも??」


「まぁ、奪われたら困るんだけどね、それより眠っているアレが目覚めてしまうのか、それを監視しているの」


「アレは眠っているんですか? 埋められて?」


「それは調べてみないとわからないわね、
 アレが眠っているのか?
 爆発で目覚めたのか?
 それともとっくに死んでしまっているのか?
 明日、吹雪がやんでくれたらハルフォード大佐が発掘作戦を進行させるのかもね?」


「それではトラビスさんも、ハルフォード大佐もアレが何であるか知ってられるんですね??」


「そうね、私たちだけじゃないわ、
 他の企業連合軍、それに連邦軍にも諜報の世界では知られているかもしれないわね

 でも一般の部隊にはまったく知られていない
 もちろんトルコ軍の中でも知っている者はほとんど居ないと思うわ、副官のオーウェン隊長ぐらいまでじゃないかしら?」

アトキンスは生唾を呑んだ……

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