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クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜

第11章 眠り姫


続けてトラビスが口を開く

彼女のゆっくり動く唇をアトキンスは見惚れてしまう


「埋まっている、というからには過去に埋まってしまったものなわけなんだけど、

 古い遺物の割りに、今では生み出しにくいオーパーツなわけ? わかるかな?

 その技術を皆が狙っているんだけど、

 厄介なことにソレは己の意思があるのね

 我々の企業連合軍側とか、連邦軍側とかで済むハナシだけじゃなくて、下手すれば人類に立ちはだかる大きな脅威、にもなりうるわ

 それでなくっても私たちアースノイドはダイクンの息子による“地球寒冷化作戦”の直後で弱っているでしょう?

 いまここで目覚められても、お互い利は無いのよね……


 でもハルフォード大佐は前から準備して、
 ソレを欲しがっている、というのが私の当面の困った問題点なの

 すぐにでも手に入れたいハルフォード大佐、

 まだ目覚めて欲しくないわたし、

 隙をついて奪おうとする連邦軍、

 そして、目覚めてしまう赤ちゃんのようなソレ

 4つの思いが交錯してるの……


 ちょっと難しいかな?

 繰り返しますけど、これは私の独り言

 絶対に他言無用よ?

 わたしもれっきとしたトルコ軍の一員ですからね?」


少年兵アトキンスは何の話しだかわからず、ちんぷんかんぷんな様子だ

それを見てトラビスは“かわいいな”と母性本能が出てしまう


「あ、えぇっと……?

 トラビスさんはハルフォード大佐の部下ではありますが、また別の指示を受けていられるのです?」


「あら? そこに気が付いたのね?

 意外と鋭いわねぇ?

 そう、大佐に敵対するつもりは無いんだけど、私はわたしなりに地球を守りたいのよね?」


「アレはそんなに危なっかしいモノなのですね?」


「そう、 とっても危険よ?

 わたしは“ムーンブレイド”と呼んでいるわ

 月から地球に向けられた刃(ヤイバ)、とね」



「………月 、………ですか?」


結局トラビスは一睡もせず、仮設テントの中から監視を続けていた


ときおりアトキンスの寝顔を見ては、やさしく微笑むのだった……


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