クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜
第11章 眠り姫
その夜アトキンスは軽いうたた寝のつもりだったがけっこう深く眠ってしまった
そして夢を見ていた
夢に出てきたのは今日始めて会ったばかりの先輩将校、トラビスだ
夢の中でトラビスは防寒帽を外し、その下の顔を保護していた目出し帽を脱ぎ捨てると綺麗な金髪が踊るように飛び出してくる
そして襟元のマフラーを抜き取ると夢の中のトラビスは防寒ジャケットのジッパーを下ろしていく
簡易ストーブのおかげでテント内は暑くなっているのだろうか? 夢の中ではわからない
トラビスは黒のタンクトップ姿となる
モコモコの防寒着からではわからなかった彼女の胸のふくらみは凶悪で、少年の視線を独り占めしてしまう
やさしく微笑むトラビスはアトキンスにも上着を脱ぐように促し、若い少年兵の肌に触れてくる
少し歳上のお姉さんに甘えているかのようだ
トラビスは少年のそそり立つものを咥え込み、我慢できなくなったのかショーツだけを下ろして自ら腰を落としていく
妖艶な笑みを浮かべる
きっと夢だ、夢に違いない
アトキンスはわかっていても、その欲望には抗えない
そんな欲望の塊のような淫夢はガサッ!とテントが開いて強烈な冷気が飛び込んできてあっという間に夢から覚めてしまった!
誰かがテント内に入って来たのだ
寝ぼけ眼のアトキンスは姿勢こそ正したものの身構えるまではいかず無防備な姿で呆けていた
目の前のトラビスはとっさの反応を見せて銃を構えていた
さすがは元諜報の工作員だ
テントに入って来たのは軍人ではなかった
“……え? 民間人???”
目の前に現れたのは雪山とは思えないほど軽装なワンピース姿の女だった
異様だ
こんな猛吹雪の中を歩いてくれるはずがない
まるで夏のリゾート地に現れたお嬢さん、とでも言うような身なりなのだ
赤茶けた長い髪
肌は陽の下に出たことがないのかと思うぐらいに白い
頬だけは赤く血色がいいのは寒い中を歩いてきたこらなのだろうか
だが息が上がっているような様子もない
女はまだ若い
といっても少女と呼べるような年齢ではなく大人に差し掛かったぐらいに見えた
女はじっとふたりを見つめてきた
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