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クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜

第11章 眠り姫


“キアラ? トラビスさんはこの女を知っているのか?”


トラビスは歯向かう意思がないことを示すとアトキンスの元に近寄り脚の傷を診るため彼の裾をまくる

「押さえてろ」


トラビスは手厳しくアトキンスに伝える

彼女は荷物の中からタオルを取り出し彼の脚を強く縛り付ける

「かすり傷みたいなものだよ、良かったな?
 また前線での傷が増えたね」


「茶化さないで!痛いんだから!」


ふたりのやりとりを眺めながら女も指先を降ろした


「お前はわたしたちを知っているようだな?
 起こしたわけではないが偶然と呼べるか?
 女、お前は何者だ?」


「私はトラビス、ティナ・トラビス!
 今はトルコ軍の軍事作戦に参加している
 地上の歩兵隊を率いている
 が、元はアナハイムでね
 わかるかい?月から来たんだ
 キミと同じように、ね?」


「同じではない、お前はキアラではないからな」


「もちろん、私はノーマルなスペースノイド
 キミのようなクローンじゃあ、ない!

 それにしても……私の知っている前情報ではキアラとは小さな子供だと聞いていたが?
 お前、本当に“キアラ”なのか?」


「よく知っているな? ただの兵士ではないな
 諜報の者だな、わざわざ月から追ってきたというわけか

 そうだ、お前の言うとおり正確には私はキアラではない、本来の求められた姿ではない

 成長してしまったのだ

 だから私はマスターキイには成れず、お守りを任されていた
 ムーンブレイドの」


「キアラじゃない!? 成長するとキアラではなくなってしまうのか? ではお前はムーンブレイドを操れないのか?」


「そうだ、私はキアラから脱落した
 月から追い出された
 守り人として
 ガーディアン、それが今の私の与えられた使命だ」


トラビスは深く考え込んでしまう

キアラと呼ばれた女は求められていないと悟って悲しい表情を見せた


アトキンスは何だか気の毒に思えてきた


“話しのほとんどはわからないけど、この人はエリートコースから外れて閑職にまわされたみたいだ

まるで戦場では役立たずで後方支援ばかり命じられるボクみたいじゃないか?”


アトキンスは少しだけ、

少しだけ彼女は同情した……


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