
クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜
第3章 グリメット城
「ありためてラーズ君、私たち家族をあの戦場から脱出させてくれて本当にありがとう
おかげで私たち家族はモビルスーツの戦闘に巻き込まれずに済んだわ」
一介の少年兵であるラーズにアリッサは深々と頭を下げたので、直接文句を言ってやろうと思っていたラーズは調子を崩してしまった
「連邦軍士官が民間人を救出させることは任務のうちのひとつ………、なんだろ?
それより俺も戦場に戻る前に司令部へ連絡を取りたいんだけどさぁ…」
その時部屋にノックがされ、ホテルマンたちがぞろぞろと入ってきて食事の用意を始めだした
ラーズは「はぁっ?」て顔をするが、そこにホテルのフロアマネージャーが挨拶にやって来た
「ラーズ様、先程はホテルの従業員が適切な対応が出来ずご迷惑をおかけいたしました
基地への送迎、食事など貴賓対応させて戴きます」
さきほど正面玄関で門前払いの対応を受けた直後なので思わず笑ってしまった
「構いませんよ、それが貴方達のお仕事でしょう?お務めご苦労さまです」
ラーズは先程アリッサが口にした台詞をそのままマネージャーに返したので、アリッサは微笑んでいた
テーブルの上には豪華な食事やフルーツなどが山のように並べられ、ホテルマンたちは深々とお辞儀をして退室していった
「こうも対応が違うとはね、金持ちと知り合いになれて光栄だよ、ホントにさ!」
「まぁ、せっかくなので楽しんでいったらどうかしら? 基地に戻ったときに話しのタネになるわよ?」
「ちげえねぇ」
ラーズはよくわからない生ハムらしきものを摘まんで頬張った
「……そのアナタの基地への連絡なんだけど、私のコネのほうから軽く兵隊さんへのお礼の電話をしてみたのだけれど、話しが噛み合わなくって」
「……どうしてだい?」
「戦闘は一段落して部隊は引き上げているらしいのだけれど、ラーズ・ローズ軍曹はまだ帰還していないって言われたの」
「そりゃあそうだろ?俺は此処に居るんだから
何がおかしいんだ?」
「ラーズ軍曹の機体は基地へではなく、ゾーナタ部隊のほうへ移送されたって言うのよ
理由はわからないけれど、私の娘はどうやら別の部隊に拾われてしまったらしいわね
で、それはラーズ軍曹の扱いになっているからあなたが今から基地に連絡してしまうと、貴方の立場が悪くならないかしら?」
