テキストサイズ

クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜

第3章 グリメット城


ラーズはマーシャの手伝いを終えると格納庫から離れた
これ以上長居すると彼女たちの仕事の邪魔をしているように思えたからだ
おそらく部外者が乗艦していることは知れ渡っているだろうし、目の前をうろつかれたら意識したり相手をしないといけない雰囲気になってしまうだろうまだまだこの艦で働くクルーと話しをしたかったがこれ以上迷惑は掛けられないと思えた
それでも休憩時間を過ごすであろうカフェテリアへ戻る気もなれない
あの娘たちと触れ合う気にはならなかった
兵士であるラーズからすれば戦場に子供が居ることに馴染めないのだ
それが多少不気味だったり生意気な態度であろうとも子供は子供なのだから


ラーズは通路をブラブラ歩いていくうちに外が見える小窓を見つけた
ただの通路ではあるが片側に外の様子が見えるのだ
と言っても夜間のため何かが見えるわけではなかったが、眼下には街の灯りが少しだけ見えた


通路の窓側とは反対側はそれぞれの個室があるようで扉の向こうに人の気配はするものの夜間とあって通路に出てくる者は見受けられない


そんな夜の寂しい時間のとき、目の前の扉が開いた
びっくりしてつい身構えてしまうと、部屋から出てきた女性も見慣れぬ顔のラーズと鉢合わせしてしまい露骨に驚いていた


「あ、ごめん」

「いや、俺の方こそすまない」

軽く会釈して彼女は立ち去ってしまった
此処ではアフリカ系のクルーを見たのが初めてだったので少し意外だった
ラーズが所属するブルガリアのコートガード基地には数名のアフリカ系クルーが居て陽気な男達であったが女性クルーは居なかったので意外に思えたのだった


そのまま外の景色を眺めていると再び先程のアフリカ系の女性が戻ってきた
手にはドリンクのカップを持っており、どうやら私室でくつろぎたかったのだろう、カフェテリアから持ってきたようだ


「夜の眺めなんて何にも見えなくてつまらないでしょ?」


黒い肌から白い歯が綺麗に覗く
彼女はまだ二十代程度の若いクルーのようだ


「話せる知り合いが居なくてね、外の景色を眺めるぐらいしかすることが無いんだ、
 もしかしてこの通路は女性専用の通路なのかい? それなら悪いことをしたかな?」


「いえ、男女を隔てるような区画はこの艦にはないわよ? 貴方がサニービーチから乗り込んで来た連邦の軍人さんね?」

人懐っこい会釈をした

ストーリーメニュー

TOPTOPへ