クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜
第5章 ハルフォード提督と5人の将軍
ヘリはマンマラ海を臨むイズミット湾上空を飛ぶ
湾全体は海軍基地や船舶のドックが並んでいる
ヘリは海沿いから少し離れた山側へ向かっていく
やがて開けた台地のような場所に滑走路が並ぶ施設が山の中に現れた
イズミットの新設空軍基地
山あいの中腹に強引に作られたこの施設はジェフリーから見ても異質だった
開けた土地に作られたというより、何かを隠すために作られたような基地に思えるのだ
建物がいくつか確認できるが、基地と言うには少なすぎる
また格納庫も山の中腹にトンネルのような穴を開けたような自然の要塞のように思えた
「何なのですか、ここは?」
「基地のほとんどは地下にあるんだ、副長には確認してもらいものもある、早速下に降りよう」
ジェフリー副長はオーロラに率いられ建物からエレベーターに乗り込み地下へ降りていった
「スタッフの居住区から作戦室まですべて地下に隠されている、敵からの空襲が来ても地下にはなんの影響もない、もちろん格納庫もだ」
エレベーターから降りると真新しい通路が続く
まっすぐ進んていくと、途中でロックされた場所に辿り着く
「ここからは権限のある者だけが入れるブロックだ、もちろんキミも入れるからな」
顔認証、声紋チェック、指紋認証、最後にパスワードの入力をして扉が開いた
「えらく厳重なんですね、軍隊とは言え…」
「提督も視察に来るからな、厳重に越したことはない、ここからまた地下に行くぞ?」
隔離されたブロックからさらに地下へ降りていく
閉ざされた密室のエレベーターの中で二人きりとなった
ジェフリーは年齢差がほとんど感じられない美しい上官が不思議に思えた
“この歳で将軍として部隊を率いるなんてどんな実績を上げてきたらここまて這い上がれるのだろうか?”
まだ事務的なやりとりしかしてこれていない間柄だが、これからこの人の人なりを知れていくのだろう
そして多くの部下たちを牽引していかねばならない、とジェフリーはまだ不慣れな赴任地に不安を隠せなかった