クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜
第5章 ハルフォード提督と5人の将軍
「ここから先は〈研究ラボ〉だ、
さらにアクセス出来る者を制限する」
「研究?」
ジェフリーは思い立つとここまでの通路で誰ともすれ違わなかった事に気がついた
いくら新設の基地とは言え職員やら作業員がいるものだろう
それだけクルーが少ない基地のなかでさらに侵入者を制限するなんてよっぽどの機密事項を担っている施設なのだろうか、と不安がますます大きくなる
最下層まで降りてきてエレベーターが開くと、さっそくそこは警備室が待ち構えていた
通路の壁側か透明なガラスで覆われていて、ガラスの向こうに数人の警備兵が居たのだ
ジェフリーはこの位置で初めてスタッフを見たのだった
「ここの警備兵の許可を取らないと先のブロックには進めない、万が一敵が侵入してきてもここで足止めを食らう、警備室のガラスは強化されていてМ76手榴弾でも破られない」
ガラス越しに幾つかの認証承認を受けてようやくふたりは中へ通された
「空軍基地というより、この地下研究所を守るために作られたようですね」
「そうだ、だが周囲には絶対に伝えるな?
あくまで空軍基地として振る舞え、
〈サッドウィング隊〉の部下たちであってもこの地下の研究所を知られてはいけない
これは提督直属の施設なのだ」
「わ、わかりました!中隊内の部下であっても多言しません!」
「通常は提督と将軍クラスまでの最高位の機密だ、もちろん他の部隊の副長にも知らされていない、キミには私の直属となるのだから特別に披露している
我が〈サッドウィング隊〉は他の部隊とは異質だと言うことを忘れないで」
そう告げて将軍オーロラは扉を開けた
中には白衣のスタッフが何人もパソコンに向かっていたり、ミーティングをしたりしている
まるで大きな総合病院のようだ
白衣のスタッフたちは将軍であるオーロラを見かけても立ち上がったり敬礼などもせず軽い会釈だけをしているのも異質だ
「彼女に会える?いま何をさせている?」
「あい変わらずゲームばかりしていますよ、叱ってやって下さい」
白衣の若い女性はお手上げだとでも言いたげなジェスチャーをしてみせた
事務所のような場所を抜けて奥のドアを開く
そこにはやたらと広い部屋の真ん中に
たったひとり小さな子どもが座っているだけだった…