クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜
第5章 ハルフォード提督と5人の将軍
ジェフリーは部屋の周囲を見回す
体育館ほどの広さで、天井は普通の部屋と変わらないが真ん中に物が集中しており、ほとんど広さに意味がない
部屋のほとんどが使われていないのだ
その真ん中のゲーミングチェアにひとりの子ども、女の子がひとりちょこんと座り目の前の大画面のモニターに映し出されているゲームに夢中だ
歳の頃は十ほど、初等教育を受けるような歳だろうか
ブロンドの髪を後ろにまとめて適当に巻いてある
白いワンピースからは華奢な腕が伸びて、ゲームのコントローラーを掴んでいた
そこへ将軍オーロラが近付く
「ずいぶんご執心ね、キアラ
ジャスミンが嘆いていたわよ」
キアラと呼ばれた少女は振り向きもせず画面から顔を外さなかった
「オーロラ、戻ったんだね
私は毎日のノルマは終わらせたの
とやかく言われたく無いね!
それより獲物は手に入れたの?」
小さな子どもキアラは低い声で歳上のオーロラにタメ口で応えた
ジェフリーは少し気味が悪い子供だと思った
「ん、オーロラ!珍しく男を連れ込んでいるじゃないか!まさか昇格したからって職権乱用してるんじゃないだろうね?」
「余計な事は言わないで、ジェフリー・カルバートよ、私のサポートに就くの
あなたが失敗したときに苦しまずに終われるようにトドメをさしてくれるわ」
オーロラは目の前の子供に対して残酷な忠告をした
ジェフリーは紹介されたものの、どういった自己紹介が良いのかわからず黙ってしまった
「はじめまして、ジェフリー!
わたしはキアラ、見ての通りただの子供だ
身体が小さいから撃つ時にミスらないでね」
キアラは画面に釘付けになったまま高笑いをした
下品なジョークにジェフリーは気が悪い
ますます話す気になれなくなった
察したオーロラがジェフリーの肩をポンと叩いて合図をする
「じゃあね、キアラ! 今夜の夕食はネズミの丸焼きだそうよ、行きましょう、ジェフリー」
ふたりは少女に背を向けて遠いドアまで歩く
ちょうどドアの近くまで来たときにキアラが声を掛けてきた
「ジェフリー! 今夜のメニューはアンタだよ
オーロラはレアが好みなんだ」
ジェフリーが思わず振り返ると、少女はゲームを中断してこちらに向きになおっていて、彼女と目があった
まだまだ小さな幼い子供が笑っていた