クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜
第5章 ハルフォード提督と5人の将軍
あっ、と驚いているジェフリーを無視してテーブルの上に広げられている書類やタブレット端末に目をやるオーロラは無防備な姿をさらしても気にもとめていない様子だ
「電子署名のほうはともかく書面のものはそっちのファイルにまとめておいて
明日提出しておく
さぁ、明日は早いんだ、さっさと休もう」
オーロラはそのまま奥の扉を開いて入ってしまった
ジェフリーはファイルをまとめてから立ち上がると彼女の後を追った
部屋はベッドルームになっていて照明が落とされた室内には大きなキングサイズだけが備えられている
そしてそこにオーロラはローブをまといながらベッドの中で書類に目を通していた
「ゲストルームが備わっている様子は無さそうですね……」
「まだ建造中だと言っただろう?他の部屋はまだ設備を用意してないんだ、休めるのはここだけだよ」
ジェフリーは先程の子供の言葉を思い出した
“俺がディナーにされるのは嘘じゃなかったな”
「俺は隣のソファーで休んだほうが良さそうですな」
ジェフリーは部屋を出ようとするとオーロラがベッドの端をバンバン叩いた
「ここしか休める所は無いと言ったろ?」
ジェフリーはため息をついてベッドに近づいた
「俺のいびきで部隊長が寝不足になるのは申し訳ないですね」
「いびきなら私のほうが酷いかもしれんぞ?」
ジェフリーはスーツをめくって身を沈める
軍のベッドとは思えないスプリングだ
これなら深く眠れそうだ、と思える
ちらりとオーロラのほうを見るがまだ文書のチェックをしているようなので邪魔せずごろりと背中を向けた
あまり面識のない他人と寝室にいることくらいは軍の二段ベッドで慣れているが、女性の、それも美しい上官とベッドをともにするのは気が引ける
しかし寝付けなかったのも30分ほどであって、いつの間にかそのまま眠ってしまった
次に気がついたとき、すでに部屋照明は落されオーロラも寝入っている様子だった
隣に視線を移すとすぐ目の前にオーロラの寝顔が迫っていた
“子供じゃあるまいし無防備過ぎないか、この人?”
と不思議に思えたのだった