
クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜
第6章 接触
「この子たちは私の家族で有るのですが残念ながら血の繋がりはありません
彼女たちは“兵器”の一部としてこの世に生み出され、戦わされ、虐待され、売買されてきました
ご存知通りニュータイプは凄まじい戦力となり得ることは明白ですが、その発生原因は未だ特定されていません
またそれらを人工的に生み出した疑似ニュータイプ“強化人間”も不安定な存在ですし、とても非人道的な扱いを受けていた事が記録されています
この子もそれらと同じようにある研究機関から“兵器”として生み出されました
最悪な事にこれらを生み出す設計図、遺伝子情報そのものが売買されるようになってしまい、世界中で彼女たちを生み出すことができてしまったのです……、
私はね、ウェールズの田舎の貧乏貴族からここまで軍勢を作るところまで這い上がってきたしょせん“成り上がり”です
このような汚い殺伐とした仕事は大人の勝手な理屈であって、この子たちをもて遊ぶ事は関わらせてはいけないと思っています
ですが、この子たちは一方では“兵器”なのは事実です、凄まじい戦闘能力を秘めているのは事実なのです
私たちはこの子たち協力を得て、世界中に今も生み出されている“姉妹たち”を救ってやりたい
私の手元に届いた情報では黒海警備隊と称する“ゼントリックス軍”ハルフォード提督がその子供“エターナル・チャイルド”を手に入れているという確かなものを得ました
貴方がたから見ればグリメット軍もゼントリックス軍も同じ連邦軍に敵対する“トランキュリティ陣営”のように思われるでしょうが、我々はそれぞれが別の組織であって、手を結ぶこともありません
特に今回は“エターナル・チャイルド”の件があるように、個人的には私とハルフォード提督は敵対する立場にあります
そしてラーズ君のブルガリアの連邦軍、さらにこの“ゾーナタ部隊”もハルフォード提督と敵対している
我々3つの組織ともにハルフォード提督と敵対しているでしょう?
さらに言うと相手はひとつの軍隊では有りません!
提督の下には〈ラスト・ディナー〉と呼ばれる5つの強力な軍隊を伴っています
私はこの黒海において貴方たちと〈共同戦線〉を組みたいと希望しております」
ヨハネスとホーンキストはやはり、と考えていた通りになったと、顔を見合わせたのだった……
