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クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜

第6章 接触


スティーブ・グリメットが語り終えると再び静かに紅茶に口をつけた


ヨハネスが黙りこくっているため、ラーズは立場の違いを理解したうえで質問を投げかけた


「あの子は……、あの子たち……、アンタの娘たちは皆その〈チルドレン〉だってのかい?
 戦闘マシーンとして作られたとでも言うのか」


何故かラーズは自分でもわからないくらい苛立っていた
単純に子供を戦場に引き入れることは納得ができなかったのだろう


「私の娘たち……、彼女たちのほうがもっと悲惨です
 私が見つけた最初の子は……、

 とある私設軍隊の中で慰みものとして扱われていたのです!
 まだ幼い身体に大人たちが群がっていました

 当時わたしはまだ自分の部隊も持っていないヒヨッコでしたが

 敵地へ乗り込んだときに偶然見かけたその光景に衝撃を受けました
 
 私は怒りの感情に任せて丸腰の敵兵士を皆殺しにしたのです

 それは敵兵だからではありません
 わかるでしょう?


 わたしは同じ大人として、許せなかった


 助け出した少女が私にかけた言葉…
 私は一生忘れません


彼女はこう言いました


〈わたしもころして〉と」





ダンッッッ!!!


机を強く叩いたのはラーズであった


だが何も言えなかった



「ラーズ君、そういう事です
 その感情が、当時の私の感情なのです


 保護した少女はそのまま私の元に残りました


 彼女からたくさんの情報が得られました

 彼女のようにさんざん利用された挙げ句、捨てられていく姉妹たちが世界中に作られていた事


 彼女たちは〈エターナル・チャイルド〉ではなく〈チャイルド〉からさらに乱雑にコピーされた劣化消耗品てあることも…


 本当に悲しいことです


私は私財を投げ打ってグリメット家専属の私設軍隊・〈グリメット軍〉を作り出しました


家を守るため、と銘打ってありますがその裏では世界中に作り出された悲しいコピーたちを助け出す事なのです

今では私に賛同してくれた者達も一緒の艦で共に戦ってくれています

 えらく大所帯になってきましたが」


スティーブは話し終えると彼らのテーブルから離れて娘が待つ席へ戻っていった


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