クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜
第7章 バルケシルの炎
1時間ほど部屋でのんびりしているとラーズが時計をチラリと見て「そろそろだな」と言った直後に部屋のドアがノックされた
ラーズがドアに近づく
「ルームサービスは頼んでないぜ?」
「焼き立てのバクラヴァ(パイ生地のような名物の焼き菓子)があるんだ、甘くて美味しいわよ」
「いくらだい?連邦のクレジット使える?」
「330リラよ、現金オンリー」
「じゃあ、いただこうか」
ラーズはドアを開けた
ローズはまさかラーズがドアを開けるとは思っていなくてギョッとしている
「ちょっと!」
「大丈夫、さっきのはドアを開ける前の暗号なんだ」
「え?」
施錠を解いてドアを開けると、若い男女が入ってきた
ふたりとも地元民らしいラフな格好で女は頭にスカーフを巻いていたがトルコ人ではなくロシア系の顔立ちをしていた
「久しぶりね、ラーズ!」
「学生以来だな、ケイティ」
ふたりは知り合いらしく馴れ馴れしくハグをして頬を寄せ合った
「こっちはローズ、妹なんだ」
「アンタに妹なんて居たの?こっちはレヴァン
彼氏って言いたいけど、作戦上のパートナーよ」
紹介された細身の優男は苦笑いして握手してきた
「お菓子はないの?」と二段ベッドの上からローズが尋ねた
「ごめんね、ローズちゃん
ただの暗号なの」
「なぁんだ!がっかり!」
ローズは不貞腐れてしまった
「この部屋の両隣の部屋は空けてもらってる、私たちの部屋はその隣
このフロアは私たちだけしか居ないようにしてあるわ」
「おう、助かるぜ
向こうには今夜いけそうか?」
「ええ、列車で少し移動して向こうに車を用意してあるわ、すぐ出る?」
「ああ、待ちくたびれてたんだ
駅まで歩くあいだにバクラヴァ買えるか?」
「え?買ってくれるの??」
ローズは満面の笑みを浮かべた