
クローン人間は同じ夢を見るのか 〜オルタナティブ・キイ〜
第7章 バルケシルの炎 〜イスタンブール編
トラム(路面電車)を降りると夕方の賑わいで街は昼間よりも活気づいていた
観光客相手の土産物やらジャンクフードのトロリーワゴンが並んでいる
旧市街とを隔てる大きな橋の近くを通っていたとき、それまで満足そうに焼き菓子を食べていたローズが突然立ち止まり電池が切れた人形のように動かなくなってしまった
「ローズちゃん?」
ケイティが心配そうにローズの肩を抱き締めてやる光景を見て、ラーズははっとした
彼女の固まった視線の先
橋の向こう
観光客でごった返す橋の少し離れた場所に人影がある
3人の人影
1人は背の高い金髪の美女
その隣は軍人らしき髪型の男性
そして
ふたりの真ん中に小さな女の子の姿
向こうもこちらを見つめているように見える
数百人の観光客が行き交うなか、ラーズたち4人と向こうの3人だけ時が止まったかなように静止していた
「そ、そんな…?」
ラーズは驚いた
橋の向こうに佇む子供はローズと同じ顔をしていた
遠目でもすぐにわかった
そして当然、ローズは先に察知していたのだ
「なにッ!?ラーズ??言ってくれなきゃわからないわ?」
ちょうど橋の近くを中国人の団体客が通りかかった
橋の向こうが遮られて見えなくなった
騒がしい団体客が通り過ぎていくと、その先の3人組の姿は既に見えなくなっていた
「……見逃してくれたみたいだな……」
ラーズは深いため息をつく
「……そうね、あの子すごい敵意だったわ」
ローズも顔がこわばったままだった
「アナタたち何を言ってるのッ!?」
ケイティとレヴァンは訳が分からず、ただとてつもない事態があったのだろうとだけ想像がついたのだった
