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メダイユ国物語

第2章 ラバーン王国のプリンセス

「なぜこんなことをするのですか? ラバーン国王の居城に対し武器を以て襲うなど、反逆行為も甚だしい。そもそもあなたは何者なの!」

 王女も最初は冷静さを装っていたが、徐々に激昂したのか、言葉の最後はかなり語気が強かった。

「ユゲイア王国。小さい国ですが、姫君なら名前くらいはご存知でしょう?」

「え、ええ。存じ上げてます」

「私はそこの摂政(せっしょう)を務めている者です。名前はオズベリヒ・ブリューゲルと申します」

「摂政? 国王ではない者が、国王に成り代わり権限を代行しているということですよね?」

 マレーナは訝しむ表情で男を見た。

「はい。我がユゲイア王国はつい二か月ほど前に国王が亡くなりました。すでにご存知かと思いますが」

「ええ、両親とわたしは国葬に参りました」

 そうか、あの時か――この男に見覚えがあった理由が判明し、マレーナは溜飲が下がった。

「ユゲイアの亡き国王の後継者であられるご子息は、現在まだ八歳です。未成年であるため、当然政務を執り行うことがまだできません」

「それであなたがその後継者に代わり、政務に就いているということですね?」

「ご理解いただけて幸いです」

 オズベリヒと名乗ったその男は、大げさに最敬礼をしてみせる。相変わらずの薄笑いで、そこに敬意などは全く含まれていないことはよく分かる。

「分かりません。それがなぜ、ラバーン国王の居城を襲撃することになるのですか?」

 至極当然の問いだった。全く理由が掴めない。マレーナは質問を続ける。

「クーデターですよ。今回のこれはその第一歩に過ぎません」

「クーデター……ですって……」

「そうです」

 オズベリヒは薄笑みで歪めたままの口で答えた。

「メダイユ連邦国の政策に不満があるのなら、正式に議会で問題提起すればいいじゃないですか。なぜ暴力で解決しようとするのです? また百年前の、あの戦争の時代に戻りたいのですか?」

 国王不在の今、マレーナは替わりを努めようと必死だった。十六歳の少女とは思えない、対応ぶりである。

「ふん――」

 落胆する表情で首を横に振ると、オズベリヒはさらに続ける。

「姫君は何も分かってはおられない。この惑星の歴史を上っ面しか見ていない……」

「どういうことですか?」

 マレーナは、ますますオズベリヒに対する不信感が募る。

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