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メダイユ国物語

第2章 ラバーン王国のプリンセス

「この惑星の歴史――特に長い戦争が終わりを迎えた前後からそれ以降の歴史は、教科書に載っている内容は全くのデタラメです。大事なことが隠されて、なかったことにされている」

「その大事なこととは、どういったことでしょう? わたしが聞かせていただいても、構わない内容でしょうか?」

 目の前の問題を解決――出来るのか、全く自信はなかったが――するためには、まずは彼の話を聞くべきだ、マレーナはそう思った。

「……では、お聞かせいたしましょう。この惑星の、この国々の歴史に隠された闇を」

 彼はそう言うと、手近のソファーに腰を下ろした。長い話になるということだろう。彼はマレーナに対してもソファーを薦めたが、王女はそれを断り、彼の話に耳を傾けた。


 ユゲイア王国の摂政であるオズベリヒ・ブリューゲルの語った、惑星オセリアスの近代史に隠された事項――特に戦争が終結して連邦国家が誕生するまでの歴史――は、にわかには信じることの出来ない、驚くべき内容だった。

 メダイユ連邦国はラバーン王国が中心となり、国々をまとめて誕生した。その事実は間違いない。ところが、記録では『話し合いにより平和的にまとめ上げた』とされていたが、実際には全く逆であったと、オズベリヒは言う。

 兵器製造を基幹産業とするユゲイア王国は本来、ラバーン王国の友好国であり、属国でもあった。小国ユゲイアの持つ軍事産業と、それに支えられた軍隊は、ラバーン王国の陰の兵力として戦時中より暗躍してきた。そしてメダイユ連邦国設立の際も、それに反発する各国の有力者たちを、ユゲイアの有する軍隊――むしろ暗殺集団である――が闇から闇へと葬ってきた。ラバーン王国は武力によって各国をまとめ、半ば力任せに連邦国を設立させたと言うのである。

 しかし、そんなユゲイア王国の行為は、決して功績として讃えられることはなかった。それらを綴った記録も一切合切が破棄された。惑星オセリアスの歴史からは、元々無かったこととして抹消された。全ては、あくまでも『平和的』に、国々がまとめられたことにするためである。

 そしてオズベリヒという男は、そんな歴史の陰でラバーン王国の命を受け、殺戮行為を繰り返してきた軍隊を率いる一族、ブリューゲル家の末裔だった。

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