メダイユ国物語
第5章 幕間 その二
2
「戻りました」
塔の自室に戻ったマレーナは、重い扉を開いて室内に向けて声を掛けた。
ところが返事はなく、誰も出迎えに現れない。パウラが留守番をしていたはずである。
「パウラ? いないのですか?」
侍女たちに使わせていた隣室と浴室に手洗い、私室から直接行き来できるそれらへの扉を開いて確認するが、どちらにも彼女の姿はない。
(どこへ行ったの? パウラ……)
マレーナの心に不安が募る。まさか彼女まで、パウラまでどこかへ連れ去られ、恐ろしい目に遭わされているのではないか? そんな考えが頭から離れなかった。すでに日は沈み、窓の外は暗くなっていた。
マレーナは私室を出ると、行動が許された範囲を探すことにした。まずはエレベーターと非常階段への扉の前で立哨する兵士たちに尋ねたが、やはり知らぬ存ぜぬの繰り返しだった。
回廊を巡り、各部屋の扉を確認した。出入り可能な共用の浴室と手洗い、そして台所以外の部屋は施錠され、出入りが出来なくなっていた。もちろん浴室と手洗い、台所にはパウラの姿はない。
自由に行動出来る範囲は全て探した。結局、手掛かりすら何も得られなかった。
だが、ある部屋の扉の前で、マレーナは意外な物を発見する。廊下の隅に落ちていたそれは、マレーナの私物のストールだった。
(なぜこんな物がここに? 部屋から持ち出した覚えはないのに……)
その扉は、現在は使われていない部屋の入り口である。把手を確認したが、やはり施錠されていた。
マレーナは一旦あきらめ、私室に戻ることにした。彼女は疲れていた。昼間に無理やり見せつけられたファニータの、身も凍るようなおぞましい実験のショックが、未だ尾を引いている。
それでも、こんな時でも空腹を覚える自分が、マレーナは情けなく思えた。彼女はもう一度台所へ向かい、簡単な食事の用意をした。いつ帰って来てもいいようにと、パウラの分も合わせて。
「戻りました」
塔の自室に戻ったマレーナは、重い扉を開いて室内に向けて声を掛けた。
ところが返事はなく、誰も出迎えに現れない。パウラが留守番をしていたはずである。
「パウラ? いないのですか?」
侍女たちに使わせていた隣室と浴室に手洗い、私室から直接行き来できるそれらへの扉を開いて確認するが、どちらにも彼女の姿はない。
(どこへ行ったの? パウラ……)
マレーナの心に不安が募る。まさか彼女まで、パウラまでどこかへ連れ去られ、恐ろしい目に遭わされているのではないか? そんな考えが頭から離れなかった。すでに日は沈み、窓の外は暗くなっていた。
マレーナは私室を出ると、行動が許された範囲を探すことにした。まずはエレベーターと非常階段への扉の前で立哨する兵士たちに尋ねたが、やはり知らぬ存ぜぬの繰り返しだった。
回廊を巡り、各部屋の扉を確認した。出入り可能な共用の浴室と手洗い、そして台所以外の部屋は施錠され、出入りが出来なくなっていた。もちろん浴室と手洗い、台所にはパウラの姿はない。
自由に行動出来る範囲は全て探した。結局、手掛かりすら何も得られなかった。
だが、ある部屋の扉の前で、マレーナは意外な物を発見する。廊下の隅に落ちていたそれは、マレーナの私物のストールだった。
(なぜこんな物がここに? 部屋から持ち出した覚えはないのに……)
その扉は、現在は使われていない部屋の入り口である。把手を確認したが、やはり施錠されていた。
マレーナは一旦あきらめ、私室に戻ることにした。彼女は疲れていた。昼間に無理やり見せつけられたファニータの、身も凍るようなおぞましい実験のショックが、未だ尾を引いている。
それでも、こんな時でも空腹を覚える自分が、マレーナは情けなく思えた。彼女はもう一度台所へ向かい、簡単な食事の用意をした。いつ帰って来てもいいようにと、パウラの分も合わせて。