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人造人間フランくん

第1章 人造人間、作りました。

「やっと、完成した」
Dr.シュガーこと佐藤白は、この日、稀代の大発明をした。彼女の行いは世間一般の倫理や道徳を前に何度か炎上を見せたが、そんなことは彼女にとって構っていられない小さな問題であった。
彼女はただ、自分の実験を成功させることだけに心血を注いだ。その結果が、いま彼女の目の前に仰向けに眠っている美しい大男だ。彼は、彼女の息子だ。勿論、実の子供ではない。彼女が創造した作品、と言えば正確だろうか。
そう、白はこの日、人間を創造することに成功した。今まで小説や漫画の中でしか見られなかったそれを、20歳という若さで作り上げたのだ。彼女が自称ながら天才を口にする理由が、此処からでも分かるだろう。
「さて、起きる時間だ、フラン」
フラン。腐乱とも孵卵とも読めるその名前は、彼女が敬愛するフランケンシュタイン博士から名付けた名前だ。フランケンシュタイン博士と言えば、この世界でもっとも有名なあの人造人間を作った博士であり、人造人間の創造を人々に夢見させた第一人者である。
「さぁ、フラン。この腐り切った世界に、私の力を示すが良い!」
高笑いを吐き出しながら、白はフランに最終調整を加えた。電極に電気を流せば、ガルバーニ電流の流れにより命無き体は起き上がる。パチン、パチン、と電撃の音を立てながら、男は長い睫毛に縁どられた緑色の瞳を開いた。
「私、は」
「ようこそ、フラン! お前こそが、私の最高傑作だ!」
白はまだ電気が流れていることも忘れて、フランの体に飛びついた。絶縁抵抗性の白衣を着ているとはいえ、強力な電気が流れている彼に抱き着けば次に起こるのは――――感電である。
「きゃああああっ!?」
いきなり自分に飛びついてきて、感電し、意識を失う白を前に、フランは慌てて自分の電極から電源装置を外した。そうして、十分に充電された彼の頭脳は動き出す。
「貴方、は」
腕の中に眠る白に、フランは心臓の鼓動が早まる感覚を知った。彼は彼女の柔らかそうな唇に、気付かれぬように啄むようなキスをした。

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