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人造人間フランくん

第1章 人造人間、作りました。

「う……私、どうなって……」
「お目覚めですか、サトウアキラさん」
白が目覚めると、自分のことを覗き込む男がいた。驚いて飛び起きる彼女が頭をぶつけないよう、男はすっと避けてからまた彼女に近づく。褐色の肌に銀色の髪、緑の目。体に刻まれた縫い跡さえ気にしなければ創作物から生まれたかのような美しい男に、白は自分の最高傑作のことを思い出す。
「お前は、フラン」
「はい、フランと申します。サトウアキラさん、私は貴方に造られた人造人間であり、私は貴方の為に働くことが義務付けられていると、このノートに書いてありました」
白衣の中のノートを取り出されて、白は思わず蒼褪め、そして赤面した。そのノートには人造人間の作り方の他、人造人間を作り上げるまでの苦悩や愚痴、自分を認めない世界への苦悩や愚痴、自分自身の体調や精神状態への苦悩や愚痴、つまりはたくさんの弱音を連ねていたのだ。そんなものを子供とも言える人造人間に見られるだなんて、恥ずかしいことこの上ない。白は「うわあああ」と悲鳴を上げながら、寝かせられたベッドの上でジタバタした。
「ご心配なく、サトウアキラさん。私は貴方の為に存在する生き物、貴方が恥と思うことを、他人に漏らすことなど有りません」
フランがニコリと微笑むと、白は彼をじっと睨みつけ、それから「私のことは」と言葉を続けた。
「佐藤白ではなく、Dr.シュガーと呼べ」
「Dr.シュガー。可愛らしいお名前ですね」
「違う。砂糖は天才的発明に必要なエネルギー源だ。だから私はその名を名乗る。けして可愛らしい名前だからと付けたわけではない。私はそのように愚かな生き物ではない」
「可愛いことは愚かですか?」
「違う。可愛らしさに騙されることが愚かなのだ。アイドルに現を抜かす男や、ゆるキャラに纏わりつく女のようにな」
そう言う奴等は私のような生き物を駆逐するんだ。白の言葉に、フランは首を傾げる。白はフランの表情を見て自嘲混じりに言った。
「私は、醜いだろう?」
瞬間、フランは目を見開いて、白をまじまじと見つめた。そうして、彼女が今までどのような扱いを受けていたかを理解したらしい彼は、どろりと曇った目でそれを思う。
(貴方はとても愛らしいのに)
「……? どうした、フラン」
「なんでもありません、Dr.シュガー」
本心を胸に隠したまま、フランは白に笑いかけた。

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