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人造人間フランくん

第1章 人造人間、作りました。

「さて、自己紹介も終わったところで。フラン、お前の存在は私の最高傑作である。ということは、世界中にお前の素晴らしさを示さねばならない」
「はい、Dr.シュガー」
そういうわけで、と、白はフランに機材を手渡す。造り出されてまだ数時間しか経っていないフランであったが、聡明な彼は白が手渡した道具が何をするべきものか理解していた。
「Dr.シュガー。これは、動画を配信する為の道具のようですが」
「ああ。それでお前は動画配信者になるんだ。この世界で唯一の【美青年人造人間 フラン】として、私の為に動画収益を稼いでくれたまえ!」
フランはぽかんとして、それから、恐る恐る白に問う。自分のような世紀の大発明をした場合、普通の科学者ならば、学会などに発表し、その知名度と社会貢献によって地位と名誉と研究資金を貰うものではないのか、と。
しかし、フランに問いかけられた白は馬鹿々々しいと言うように鼻を鳴らし、フランの顔を優しく撫でながら言った。
「フラン。お前は産まれたてで世間を理解していないようだが。現代では出る杭は打たれるものだ。特に研究だとか学会だとか言ってるような権力者の群れに飛び込むなど、ほとんどワニの群れに全身血まみれで突っ込んでいくようなものだ。つまりは力に殺される」
だからこそ、と、白は言う。我々は底辺から着実に地位を築いていくのだ。そう言いながら、白はフランに対してカメラを向ける。
「お前のその美貌ならば、動画配信者という今時な職業にも耐えうる。そして広告収入でその日暮らしの収入を稼ぐだけならば、きっと誰も私達を潰そうとは思わないはずだ。私は聡明であり堅実な性質だからな、贅沢は言わん。お前が食わせてくれるだけで我慢しよう」
それは果たして、聡明で堅実と言えるのだろうか。というより、この創造主は自分の稀代の発明の価値を本当に分かっていないのだろうか。そんなことを考えかけながら、けれども。フランは白の期待するような瞳を前に、自分の小難しい考えを放り投げた。
(私は、この人を喜ばせられればそれで良い。その為ならば、動画配信者だろうと研究材料だろうと、喜んでなってやる)
「まずはどのような動画を作りますか、Dr.シュガー?」
「そうだな。まずはよくある『知育菓子作ってみた』系動画など良いだろう!」
意気揚々と動画の準備をする白を見つめ、フランは自らも動画作りを手伝うのだった。

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