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人造人間フランくん

第2章 動画配信、始めました。

フランが今回、知育菓子として買って来たのはいわゆる粘土風ソフトキャンディだった。箱の中には5色のソフトキャンディがあって、それらを混ぜて色を増やすこともできる画期的なお菓子である。フランは箱の中の説明を読みながら、画面の向こうにいるのだろう視聴者たちに話しかける。
「あ、早速のコメントありがとうございます! 『イケメンだ』そうでしょうか、ふふ、ありがとうございます」
フランは青色のソフトキャンディが気に入ったのか、ビニール手袋をはめてキャンディをこね始める。本当ならば素手でも良いのだろうが、昨今の流行病や人々の潔癖性を考えれば手袋越しの工作が妥当だろう。
「あ、また……『顔に傷メイクって中二っぽいw』これはですね、自前です。私は人造人間ですからね。今時は傷がないのが主流らしいんですけど、私はクラシックな男でして」
フランの口調は軽快だ。初めてで人も少ないこともあろうが、穏やかな口調には今のところアンチも見受けられない。そんなことをしているうちに、フランは手の中に小さな魚を生み出していた。粘土系ソフトキャンディは創作精度の自由さが魅力であるが、フランの作ったそれは飴細工の如く芸術の域であった。瞬間、フランも驚くほどのコメントが一気に流れ出す。
「うわっ!? こ、コメントがこんなに、ありがとうございます!」
『天才か!? 器用すぎる!』
『生きてる魚捕まえてきたのか(愕然)』
『俺を感動させる程度の能力』
「あの、私の家族が器用な人でして、多分、私は家族に似たんだと思います。皆さんに楽しんでもらえたようで、嬉しいです。ありがとうございます」
フランが微笑むと、コメント欄はまた湧き立つ。ほとんどのコメントはイケメンだの爆発しろだのと言うフランの要望に対する羨望だったが、中には彼の軽快なトークと手先の器用さに魅了されている者もいるようだった。こうして第一回の配信は大成功をおさめ、フランは笑顔のままに動画の配信を終えた。
「……Dr.シュガー。配信が終わりましたよ」
「見ていたよ、フラン。……お前は流石、私の最高傑作だ!」
世界がお前を認めたんだ、と、白は気の早いことを言いながらフランに抱き着く。背の高い自分に抱き着くと子供のように見える白を愛おしく思いながら、フランは彼女を抱き締め返した。

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