テキストサイズ

時給制ラヴァーズ

第1章 1.冗談ではないらしい

 ……どうやらすごく突飛な案とはいえ、一応考えてはいるらしい。
 話の流れとしてはだいぶ無茶だとは思うけど、絶対無理だとも言い切れないし、ぶっちゃけ結果までは責任取らなくていいんだよね? もし信じられなくても、結婚を断る言い訳に使うことはできるだろうし。
 だったら恋人のふりで時給一万なんて、いいバイトすぎるじゃないか。

「わかった。引き受ける。なんか大変そうだし」
「本当か? ……ありがとう、すごく助かる」

 違法でもなくハードな肉体労働でもなく、樫間くんの親の前で恋人のふりをするだけでお金をもらえるのなら引き受けない理由はない。
 即断即決の俺に、樫間くんはすごくほっとしたように息を吐いて、少しだけ笑った。

 本人も無茶な話だとわかっていて受けられるとは思っていなかったのかもしれない。だからこそその安堵が表情にわかりやすく表れていた。
 恐い顔しててもイケメンだけど、笑うと文句なくかっこいい。
 持ってる人は色んなものを持ってるって言うけど、樫間くんはこの年ですでに人生勝ち組って感じだ。まったくもって羨ましい限り。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ