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時給制ラヴァーズ

第7章 7.ヴァージンペーパー

「ともかく、さっき言った気持ちが、俺の本当の気持ち。お前の傍にいると心地いいんだ。すごく楽に呼吸が出来ている気がする。こんなの、今まで感じたことがなかった」
「……そりゃ、俺だってあれが本音だけど」

 手を取られ、軽く握り返すともっと強く握られた。
 薄っすら汗ばんだ手が、慶人の緊張を俺に伝えてくる。今、俺の傍は心地いいと言ったくせに、こんなにドキドキしているのがなんだか微笑ましい。

「あのな。そういうのが、俺を惑わせてんの。お前、なんにも気持ちがない相手にあんなこと言えるなら役者か詐欺師かになった方がいいぞ?」
「そんな器用なこと出来ないよ。……って、こういうのも?」

 こくん、と真顔で頷いた慶人は、一つ大きめのため息をついてから表情を改めた。さっきと同じ、恐いほど真剣な表情。

「笑顔とか、人柄とか、性格に行動に顔もスタイルもくるくる変わる表情もポジティブなところも俺を俺として扱ってくれるところも全部ひっくるめてお前が好きだ。だから『ふり』じゃなく、本当に付き合ってほしい。……お願いします」

 深く頭を下げて、慶人は真正面から俺に告白をしてきた。その真剣さと意外さに、すっかり思考が止まってしまっている。
 そうやって俺が固まっている雰囲気を察したのか、顔を上げた慶人が瞳に力を込めて俺を見つめてきた。

「それがダメなら、責任取らせてくれ」

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