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時給制ラヴァーズ

第7章 7.ヴァージンペーパー

 それから、それでも足りないと思ったのかなおも言葉を重ねてくる慶人。

「本当に付き合うなら、好きだなって思いながら一緒に出かけて、好きだなって思いながら隣にいて、好きだなって思いながら抱く。それと、今まで黙ってた分、言葉にする」
「でも、今さら改まって付き合うとか、なんかさ」
「天が嫌なら言わない。この気持ちは隠しておく」

 俺が戸惑うそぶりを見せた途端、慶人はあっさりと身をひるがえして引いた。ように見えた。

「でも、ごめん。諦められない」

 けれど、それも一瞬。すぐにきっぱり宣言されて、ぱちくりとまばたき。さっきから慶人は俺を驚かせすぎだ。

「一度決めたらしつこい血筋だってのは天も知ってると思う」
「ああ、うん、そうだね。知ってる」

 苦笑いとともに送られたそれは今度こそわかりやすい冗談で、だけど本音で、思わず笑ってしまう。
 確かに知っている。それがすべての始まりであり、俺たちの出会いのきっかけなんだから。そのご両親の血が流れているのなら、慶人だってそりゃしつこいはずだ。
 そっか。そうだな。
 結局、あんまり状況は変わっていないのか。
 バイトがバイトでなくなるということ以外。

「……ああでも、バイト代が出なくなると思うとモチベーション下がるか」
「え……?」
「ていうのは、冗談だけど。いや、冗談でもないか。大事は大事だよね。モチベ」
「天」

 からかわれたと思ったのか、慶人が軽く睨んでくる。別にふざけたわけじゃない。大事な確認だ。

「だってバイトじゃなくなったら、慶人は雇い主じゃなくなるんでしょ? そしたら関係はイーブンだもん」

 それならば俺の意識が下がった時は慶人に頑張ってもらうのが公平な関係だと思う。雇い雇われの関係じゃないのなら、俺一人が慶人の言うことを聞く必要はない。
 そうでしょ? と同意を求めたのに、慶人はさっきまで鋭かった目を丸めて俺を見ている。

「それってつまり……?」
「付き合うよってこと」

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