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時給制ラヴァーズ

第7章 7.ヴァージンペーパー

「さっき言ったじゃん」
「流れでなんとなく言うんじゃなくて、はっきり聞きたい」

 あまりにストレートな要求に、ぐっと喉が詰まる。
 そんな風に面と向かって、改めて意識して言えと言われるとだいぶ恥ずかしい。さっき言ったんだからそれで良しとしてほしいのに。
 そんななにもかも見透かしそうな鋭い瞳でまっすぐ見つめてきて素直に気持ちを言えだなんて、羞恥プレイみたいだからやめてほしい。
 意識してなければ簡単に言える言葉が、恋愛の意味で言うとなるとどうしてこんなに心臓バクバクになるんだ。

「……俺が、好きでもない人とこんなことするとでも思ってる?」
「してただろ」

 精一杯の気持ちの伝え方をしたのに一刀のもとに切り捨てられて、若干むかっとして返す。
 別に気持ちがなかったわけじゃない。ただただ流されていただけじゃないんだ。もちろんバイトとかお金のためにだなんてこともない。
 ただその気持ちが「恋愛」の意味を持つとは思いもしなかっただけだ。

「しょうがないじゃん! 男同士だし、慶人はかっこいいからそう思うのが当たり前だし優しいのもちょっとへたれなとこも、普通みんな好意持つしそれが当たり前でしょ?」

 持って当然の好意と恋を即座に結び付けるほど乙女でも恋愛脳でもない。ちょっぴりそっち方面に鈍かっただけだ。
 腹立ちまぎれに、ついでの猫パンチもお見舞いしてやる。

「こういう生活してれば慶人は俺のなのにって嫉妬だってするし独占欲だって沸くし、ずっとこうだったらいいなって思ったけど、慶人はそう思ってるからわかんないからモヤモヤするし。それがどういう意味だったかってわかったのなんて本当に今だし、改めてそんな一言言えとか言われると逆に言いづらい」
「……天って、やっぱり、相当変わってる」

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