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時給制ラヴァーズ

第7章 7.ヴァージンペーパー

「それって俺には、「好き」の一言じゃ足りないって聞こえるんだけど」
「慶人の耳は都合がいい」
「そうだな」

 いくらパンチしたって寝転がった状態じゃ大した反撃にならないのか、慶人がやたら優しい顔をしている。普段のクールで恐い顔は本当にどこに行ってしまったんだ。

「じゃあ聞くけど、天の俺への好意ってLIKE? それとも」
「LOVEだよ。なんだよもう確かめなくたってわかってるでしょ」

 ずっと抱いていた好意が愛情によるものだったと気づいていなかった鈍さを、わざわざ確かめられているようで恥ずかしいしむかつく。やっぱりここでやめてご飯を食べに戻ってやろうかと考える俺の頬を、慶人が優しく撫でた。その手が恥ずかしいくらい愛しげなものだから、すぐに斜めだった気持ちが戻ってしまうのも我ながら単純だと思う。

「いやたぶん、まだお互い理解が足りない。全然足りてなかった」
「なにそれ」
「後でちゃんと話そう。でも今はとにかく早く可愛い天を抱きたい」

 なにを言いたいのか、話を追求するのも今の状態じゃ墓穴を掘りそうで。
 結局覆いかぶさってきた慶人をそのまま受け入れちゃったんだけど。

 ……ここで頑張って話を逸らしておいた方が良かったんじゃないのかと若干の後悔を覚えたのは、その後が今まで通りじゃなかったからだ。

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