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時給制ラヴァーズ

第2章 2.急ごしらえのコイビト

「……あと、カップルって言ったらなんだろ」
「変に凝るよりかは、ベタでわかりやすいものの方がいいかもな」

 お揃いの歯ブラシにコップに食器にと、新生活でも始めるかのような買い物の仕方。だけどそこら辺はやっぱりカップルっぽく見せるために大事な要素だと思う。
 あと幸せそうなバカップルっぽい小道具と言えば。

「んー、写真立てとか?」
「ああ、今時ねーだろって思うけど、わかりやすくていいなそれ。あの二人、そういうの好きだし」

 思いつきを口にすれば、慶人は嬉しそうに笑う。どうやら慶人のご両親は写真を飾りまくるタイプらしい。きっと記念の日にはちゃんと家族写真を撮ったりするんだろう。なんなら普段から小さい時の慶人の写真まで飾っていそうだ。

「じゃあ後でデートしなきゃね。写真いっぱい撮って、デジタルのフォトフレームで流しっぱにしとくとかどう?」
「それ鬱陶しくていいな」

 男同士のカップルがどういう付き合い方をしているかはよくわからないけど、そんなのきっと慶人のご両親も同じだろうから、とりあえずバカップルっぽく見せればいいんだと思う。大事なのは引き離せないと思うくらいのラブラブっぽさだ。
 それじゃあペアルックなんてどう、とふざける俺にも、慶人は「それウザいなぁ、わざとらしすぎて最高」なんて喜んでくれちゃうから、恋人設定はどんどん膨らんでいった。

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