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時給制ラヴァーズ

第2章 2.急ごしらえのコイビト

 そして一通りの買い物を終えて家に帰ってきた俺たちは、続いて秘密の買い物をするためにパソコンを開いた。
 慶人は一人で適当に買うと言っていたけど、せっかくの『恋人同士』の買い物だ。なによりこんな時でもなきゃこんな風に買うこともないだろうから、興味半分どころか興味全部で慶人の後ろからパソコンの画面を覗き込んだ。
 物が物だからそんなものを一緒に選ぶことが恥ずかしいらしく、慶人は最後まで一人で適当に選ぶからと言い張ったけど、こうしてしまえば無理に俺を退けようとはしない。

 『恋人』として親御さんに会った時に慶人の好きなところを答えられるよう、最近慶人のいいとこ探しをしてるけれど、見た目のモテイケメンっぷりとは違って慶人は結構シャイだ。そして見た目の恐さとは違って意外と、というかかなり優しい。
 今だって俺が画面を見やすいように位置をずれてくれてるし、いちいち意見を聞いてくれる。
 一応雇い主と居候の関係だというのに何事も対等に扱ってくれる辺り、性格までイケメンだ。

 こんなに自然とモテる真似を出来る人がおいそれと彼女も作れないなんて可哀想だと思う。早くこの件が片付いて次に進めるといいんだけど……とは思いつつも、そうなると俺も新しい家を探さなきゃいけないから、少々複雑ではある。なによりせっかく知り合った慶人ともうおさらばというのも寂しいものだ。
 それでもきっと作戦が上手くいったらこのバイトの話も終わるのだろうし、そうなったら友達としての関係が残るのかどうかもわからないし……。

「天? どうした? やっぱり俺一人で選ぼうか?」
「ううん、なんでもない」

 なんとなく寂しくなってその背中にぐりぐりと頭を擦りつけたら不思議がられたから、改めて姿勢を正す。
 とりあえず、今は出来ることからやっていきましょうかと、あまり怪しそうじゃないサイトを選んでショッピングすることにした。
 まずは愛する者同士のエチケットとして持っていなきゃいけないものを選ぶ。それにあたって、なにをどれぐらい買うか指針を決めなくてはならない。

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