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時給制ラヴァーズ

第2章 2.急ごしらえのコイビト

「いいよいいよ。わかった、俺がそっちね。そうじゃないとさすがにご両親倒れちゃいそうだし」
「そんな柔じゃないけどな。でも助かる」

 慶人のご両親からしたら、突然男と付き合ってると告げられるだけでたぶん衝撃だろうに、同時に男に抱かれてるなんて言われたらひっくり返ってしまうかもしれない。別に必要以上に波風を立てたいわけではなく、和やかに済むならそれが一番いいんだ。
 それに漏れ聞く親御さんの性格上、俺相手だったら聞けないことも息子だったら聞けちゃうかもしれないし、深い話になるとさすがにボロが出るだろう。
 俺たちもよくわかっていない分なにを聞かれるかわからず、先にそこまで設定を煮詰めておくのは無理だろうから、だったら初対面で質問しづらいだろう俺がその立場の方がいいんだと思う。

 それはつまり男に抱かれている男という未知の立場を自ら背負うわけだけど、雇われている側としてはそれぐらいの話は積極的に受け入れていこうじゃないか。
 身長的には俺の方が少しばかり高いわけだけど、かっこよさでは圧倒的に慶人の方が上だからそれほど違和感はないだろう。たぶん。

 とにかく、出来ることなら俺だって嫌われたいわけでもないし、穏便に済ませられる方がいい。だから俺も誠実な恋人を演じた方がいいと思うんだ。
 男同士というところに引っ掛かりを覚えられたとしても、関係も良好で人柄も良くて、だからこそ愛し合っている二人を引き離すことには躊躇いを覚えてしまう感じがいいだろう。
 よしよし、あくまで爽やか好青年のキャラで行こう。
 そう決めたら、大体の方針も決まったようなもんだ。

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