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時給制ラヴァーズ

第3章 3.うそつきデートの行方

「ほら、こういうのってギャップ萌えっていうの? きっと女の子って、慶人みたいにかっこいい男がちょっと弱み見せてくれたりしたらきゅんときちゃうんもんだろうなって、なんか納得した」

 こういう場合は、母性本能がくすぐられるとでも喩えたらいいのだろうか。普通でも弱っている人がいればなんとかしてあげたくなるものだけど、それが慶人みたいな人だったら誰だって全力で力になりたくなるだろう。
 俺だって、そもそもこの妙なバイトを始めたのもそんな気持ちからだった。

「なんだそれ」

 けれどどうにも本人は自覚がないらしく、肩をすくめて変な顔をしている。

「そういうとこも慶人の魅力なんだよ。俺から見ればね」

 それに比べて俺はといえば、目的を忘れてお化け屋敷もジェットコースターもただ楽しむ始末。目当ての写真は撮れていないし、慶人の苦手なものを察してさり気なく避ける、なんて気遣いも出来ていない。せいぜいアイスコーヒーを買ってきたくらいだ。
 ……我ながら情けない。

「慶人のいいとこのいくつかでも俺にあれば、もうちょっとモテるんだろうになぁ」
「天はモテるだろ?」
「ぜーんぜん! 言わせんなよーそんなわかりきったこと」
「嘘つけ」

 ご冗談をと笑う俺に予想外に素早いつっこみが入って驚く。見れば慶人が少し呆れたように目を細めて俺を眺めていた。
 事実を言ってなぜつっこまれるのか。そしてなぜそんな顔をされているのか。

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