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時給制ラヴァーズ

第3章 3.うそつきデートの行方

「嘘なんてついてないけど」
「だっていつも楽しそうで、天の周りはいつも空気が明るいから。そんな人間と一緒にいたくない奴いないだろ?」

 それは褒めるというよりかはただわかりきっている当然の話を口にしただけ、というような言い方で。
 思わずまばたきを繰り返す。

「で、でもモテないのは本当ですし」
「悪いけどお前の周り、見る目ない奴多いんじゃないか?」
「……そんなこと言われたの初めて」

 ぶっきらぼうな言い方からして本人は特に褒めたつもりはないのかもしれない。それが逆に、慶人は普通にそう思っているんだって証拠みたいで。
 どう表現したらいいんだろう、この嬉しさと恥ずかしさが混ざった気持ち。
 いや、やっぱり嬉しさの方が大きい。照れくさい。だけどやっぱりすごく嬉しい。

「あとその笑顔」
「え?」

 照れ笑いする俺を見上げるように頬杖をついた慶人は、自分の唇の端を指で持ち上げて示して見せた。

「天の笑顔はとても可愛い。誰だって好きになるよ」

 それは、とても軽い言い方だったから、そうかなーなんて大げさに笑ってみせたけど。
 じわじわと慶人の言葉が脳に沁み込んでいくとともに、耳が熱くなっていくのを感じる。
 笑顔を褒められることはあっても、元気とか楽しそうとかそんな意味であって、「可愛い」なんて言われたこと初めてだ。

 ……おっと危ない。勝手に口説かれている気分になってしまった。
 恐ろしいことに慶人は中身までイケメンだから、たまにこうやってナチュラルに人を好きにさせてくる。たぶんこういう人をタラシと言うのだろう。

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