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時給制ラヴァーズ

第3章 3.うそつきデートの行方

「……迷子か?」

 二人してその声の方向を向けば、小さな男の子が一人、泣きじゃくって周りをきょろきょろ見回している。
 俺はベンチにカップを置いてその場を離れると、その子の前にしゃがんで話しかけた。

「どうしたの? お母さんは?」
「わかんない、ママ、いない、いなくなっちゃった……。ママ、ママどこー!?」

 近くに母親らしい人物はいないし、この子も探しながらどこからか歩いてきたんだろう。泣きすぎたせいか顔は涙でぐしゃぐしゃだし真っ赤になっている。

「そういやさっき迷子センターがあっちにあったな」
「あ、そっか。下手に捜し歩かない方がいいよね」

 いつの間にか隣に並んだ慶人はとても冷静で、俺はその子の頭を撫でながら考えた。もう一度辺りを見回してもお母さんっぽい人はいない。だからと言ってお母さんを捜して連れ歩いたらすれ違ってしまいそうだし、ここは迷子センターに預けるのが一番確実だろう。

「えっと、バイト中だけど、連れてってもいい、かな?」
「もちろん」

 一応今ここに俺がいるのは慶人の用事のためだから許可を取ってみたんだけど、なにを言ってんだって顔されたからほっとした。恐い顔しててもやっぱり慶人は優しい。

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