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時給制ラヴァーズ

第3章 3.うそつきデートの行方

「よーっし、じゃあ迷子センターまでママを捜そっか」
「わあっ!」

 せっかくだから、ただ連れて行くだけじゃなくてその間を使ってお母さん捜しをしようじゃないか。
 そういうことで、慶人の手を借りてその子を肩車してみた。慶人は自分がすると言ってくれたけど、俺の方が少しばかり高いからと断った。だって一応バイト中の身としては、慶人は雇い主ですし。労働するのなら俺の方だ。

 だから慶人がほとんど飲み終わっていたカップを俺の分ともどもゴミ箱に捨ててる間、その子を肩車したままぐるっと回ってみると泣き顔が一転、頭の上からきゃっきゃとはしゃぐ声が聞こえてきた。

「たかーい!」
「恐くない?」
「たのしい!」

 どうやら機嫌が直ってくれたらしい。泣かれっぱなしだったら誘拐でもしているみたいに見えるかもしれないから笑ってくれていた方がありがたい。
 なんならここまで目立てば見つかる可能性も高くなるだろうし一石二鳥だ。

「んじゃ、おっきな声でママって呼んでみよっか。せーのっ」
「ママー!」

 少し歩いては大きな声で呼ぶ男の子に、もちろん注目が集まってほんのちょっと恥ずかしさはあったけれど、慶人が隣にいてくれたし、なにより男の子が楽しそうだからなんとか心が挫けずに済んだ。

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