時給制ラヴァーズ
第1章 1.冗談ではないらしい
「あ、あの。俺城野に言われて来た藤堂ですけど……樫間くん、だよね?」
その後すぐ、俺は待ち合わせ場所となったカフェテラスにてその神様のような人物と邂逅した。
樫間慶人。かしまけいと。硬い字面がなんとなく年上っぽさを思わせたけど、俺と同じ年で、商学部だという話だった。
イケメンだからすぐわかる、と言われて戸惑いはしたけれど、驚くことに本当にすぐわかった。
足を組んでカップを傾けてる姿は、いい意味でどこか周りからは浮いていたから。優雅というか大人びてるというか、俺とは違う時間の流れ方をしているというか。なにより、すごくわかりやすいイケメンだった。
明るすぎない茶色の髪と鋭い瞳。真面目そうだけどどこかほんの少しだけ危なげな空気を漂わせている感じは、どう見てもモテそうで、そのくせ簡単には声をかけられない雰囲気で。
実際その姿を見つけてから声をかけるまで、少々の時間と思いきりが必要だった。
そんな話しかけるだけで緊張するイケメンは、声をかけた俺を値踏みするようにじっと見つめ、それから。
「……完璧」
と、呟いた。低いのによく通る声までイケメンだ。
とりあえず向かいの席を勧められ、そこに座るともう一度探るように見られた。その視線の圧が強くて、少しばかり目を逸らしたくなる。
目つきがやたら鋭いからか、その視線にはなにもかも探られそうな雰囲気があってちょっと恐い。
それでも少しでも印象が良くなるようにと笑顔を保ってたら、イケメンこと樫間くんは深く頷いてから身を乗り出してきた。