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時給制ラヴァーズ

第1章 1.冗談ではないらしい

「時給一万で、必要なら住む所も用意する。というか、俺と同居してくれれば家賃はいらないし食事も保障する」
「時給いちまん!? ……コホン、失礼」

 思わぬ金額の提示に声がひっくり返って、咳払いをして誤魔化す。

「えっと、なにその好条件? 俺に都合良すぎるんだけど」
「少しでも受けてくれる気があるなら詳しく話す、けど。どうする?」
「聞かせて」

 あまりにも求めていた条件と合致しすぎて恐い気持ちもあったけど、ここで引く気はない。だから即座に切り返すと、聞いた向こうの方が驚いたようだった。鋭い目が若干丸まっている。

「ずいぶん即決だな」
「オイシイ話ってのは待ってくれないもんでしょ?」

 そりゃ正直怪しくは思うけど、だからと言って他の誰かに譲りたいものでもない。だってぶっちゃけオイシすぎるし。

「チャンスの前髪は積極的に掴まなきゃ」
「……ふっ」

 その絵面を想像したのか、樫間くんはほんの少しだけ表情を緩めた。
 ここは一つ、城野の人脈と俺の運に拍手を送って済ませておこう。後悔は後でするもので、先にするものじゃない。
 だからどうぞ話して下さいと微笑んでみせると、樫間くんは数秒だけ言い淀んでから話を切り出した。

「まず俺の事情を話すな。俺は今、結婚を望まれてるんだ」

 それは、なんていうかとても予想外の話だった。
 てっきり重労働とか怪しい研究とか、そういうバイトの話をされるんだと思ってたから。

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