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時給制ラヴァーズ

第3章 3.うそつきデートの行方

「……お前って、一個一個が本当に突拍子もないよな」

 呆れたように呟いた慶人は、そのままくすくすと笑い始めた。
 最初は困り顔で、それから抑えきれないって感じに片手で顔を覆ってくつくつと笑っている。

「ほんっと変な奴」
「なんか申し訳ない」

 しかも謝りつつもソフトクリームを舐めてる自分がかっこつかなくて余計申し訳ない。でもせっかく買ってもらったものが溶けてしまったらもったいないし、美味しいものは美味しいうちに味わいたいじゃないか。

「……もう変なことしないから見張ってなくてもいいですよ」

 隣に並んで俺が食べる様を楽しそうに見つめる慶人の視線から逃れるように、コーンを大きく噛み砕いて口の中に詰め込む。
 そんな風に見られたって、もう面白いことなんてないのに。

「お前って、見てるだけで面白い」

 だけど慶人は機嫌よさそうに微笑みを浮かべながら俺を見ていて、照れ臭くてなにも返せずにいた。相変わらず慶人のツボはよくわからない。
 ともあれ俺は口の中に残りのコーンを詰め込むと、強引に噛み砕いて飲み込んだ。
 ほっぺたを膨らませてもぐもぐしているのがハムスターみたいだと喜ぶ慶人の様子に、危うく喉が詰まりそうになった。この身長の男をハムスターにたとえるセンスは独特すぎるけど、楽しそうだから注意しづらい。

「えっと、じゃあ改めてなんか写真撮りやすそうなとこ見つけよっか」

 ともかく今日の目的はデート写真を撮ることなんだ。さくさくと行動して次の目的地へ向かわねば。

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