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時給制ラヴァーズ

第3章 3.うそつきデートの行方

「わー久しぶりに観覧車なんて乗った!」

 例えば友達とこういうところに来たとしても、それこそカップルでもない限り観覧車なんて乗らないから少しテンションが上がる。
 しかもほぼ貸し切り状態だから、この大きな乗り物を二人占めしている気分になって妙にドキドキした。

「天、こっち来て」
「あ、うん」

 程よく高いところまで上がれば地上からはゴンドラの中は見えなくなる。それを待って、慶人の手を借りて席を移った。
 一人一人で座れば悠々としている座席だけど、当然男二人で横並びになれば身動きがしづらいくらいには狭い。
 確かにこれは恋人同士の距離だ。

「もうちょっとこっち」

 そのべったり触れ合う距離の慣れなさに、もぞもぞと座りやすい位置を探して動いていたら慶人の手が俺の肩に回されぐいっと引き寄せられた。元からなかった距離が余計に縮まり、慌ててぎこちなくないように笑顔を作る。
 やばい。引き寄せる手が意外に強くてちょっとドキッとした。そんなところに男らしさを感じてどうするんだ。

「あ、お、俺も撮ろうかな」

 明らかに自撮り用じゃない慶人のカメラより、こういう時はスマホの方がいいだろう。ごそごそとポケットから取り出し構えようとしてふと思いつく。どうせここまでくっついているなら、もう一歩。

「……っ!」

 ほっぺたにちゅー真似しようとした瞬間、慶人がこっちを振り向いて唇が当たった。
 思わず飛び跳ねて離れようにもそんな距離もなくて、結果的に見つめ合ってしまう。
 まったく思ってもいなかった接触に、一気に汗が噴出す。

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