時給制ラヴァーズ
第5章 5.一歩進んで二歩下がる
「じゃあ俺にバイトさせてよ。恋人のふりを続けよう」
「続けるって……」
「慶人の問題を解決する手伝いをさせて。一度関わったんだから、結果はどうあれちゃんと最後まで努めたい」
せっかく色々設定を考えて、色んなものを買って、突飛かもしれないけど二人で真面目に悪だくみしたんだ。やり始めたからには終わらせたい。
「ぶっちゃけ、一回だから気になるんだと思う」
「……は?」
慶人が目を丸めている気持ちはわかる。自分でもだいぶぶっ飛んでいると思うから。でも、避けてても問題が解決しないなら、思いきって正面突破するしかないと思うんだ。
「えっとですね、だから」
大きく息を吸い込んで、それからベッドの下に目をやる。
たぶんあの日から触れられていなかった段ボール。
そこからゴムとローションを掴み取って慶人の前に並べた。
「慶人が嫌じゃなかったら、もう一回してみない……?」
被害者でも加害者でもなく、酔いにも任せず自分の意志で。二人の大人の男として、それぞれの責任で。あの時の暴走を上書きしてみたらどうでしょうか。
「いや、それこそ気持ち悪いって思うならいいんだけど」
「気持ち悪いなんて、こと、は絶対にない。でも藤堂が」
「天、でしょ、慶人?」
「……天、は、なんでそんな」
「だってほら、続けるのならある程度買った物が減ってないと変じゃない? 一個だけとかさ、逆に怪しまれるっていうか」
自分で言い出したくせに今さらなにを怖気づいているのか、反応を待っていられなくて早口になってしまう。
ギャグが滑った時に似ている。そしてギャグじゃない分より一層焦る。
そもそも、なんで俺こんなに必死になってるんだっけ。よくわからなくなってきた。
「続けるって……」
「慶人の問題を解決する手伝いをさせて。一度関わったんだから、結果はどうあれちゃんと最後まで努めたい」
せっかく色々設定を考えて、色んなものを買って、突飛かもしれないけど二人で真面目に悪だくみしたんだ。やり始めたからには終わらせたい。
「ぶっちゃけ、一回だから気になるんだと思う」
「……は?」
慶人が目を丸めている気持ちはわかる。自分でもだいぶぶっ飛んでいると思うから。でも、避けてても問題が解決しないなら、思いきって正面突破するしかないと思うんだ。
「えっとですね、だから」
大きく息を吸い込んで、それからベッドの下に目をやる。
たぶんあの日から触れられていなかった段ボール。
そこからゴムとローションを掴み取って慶人の前に並べた。
「慶人が嫌じゃなかったら、もう一回してみない……?」
被害者でも加害者でもなく、酔いにも任せず自分の意志で。二人の大人の男として、それぞれの責任で。あの時の暴走を上書きしてみたらどうでしょうか。
「いや、それこそ気持ち悪いって思うならいいんだけど」
「気持ち悪いなんて、こと、は絶対にない。でも藤堂が」
「天、でしょ、慶人?」
「……天、は、なんでそんな」
「だってほら、続けるのならある程度買った物が減ってないと変じゃない? 一個だけとかさ、逆に怪しまれるっていうか」
自分で言い出したくせに今さらなにを怖気づいているのか、反応を待っていられなくて早口になってしまう。
ギャグが滑った時に似ている。そしてギャグじゃない分より一層焦る。
そもそも、なんで俺こんなに必死になってるんだっけ。よくわからなくなってきた。