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時給制ラヴァーズ

第6章 6.雷鳴はまだ遠く

「あーそれでお前みたいな奴を探してたってわけか。確かに年上に可愛がられるタイプだもんなお前って」
「それは喜んでいい表現?」
「もちろん。で、だからあいつはバカみたいにモテるくせに彼女を作らなかったわけね。納得」

 腕を組み、何度も深く頷きながら納得している城野。その言い方に引っ掛かって、今までなんとなく気になっていたことを問う。なんとなく、少しばかり小声で。

「……やっぱ慶人ってモテんの?」
「当然。それも、バカみたいに」

 すると素早く力強く肯定された。
 慶人はあの通り顔が良くてクールだけど優しく成績優秀で、家賃収入のある物件持ち。そんなの女の子が放っておくはずがない。それは当然だ。
 モテるだろうとは常日頃思っていたけれど、実際の話を知っている人から聞くとなぜか複雑だ。
 嫉妬だろうか。なんだかもやっとする。

「けどあいつあの見た目であの性格だから、女の子の方が一方的にのめり込んじゃってストーカー化したりしてたんだよ。それとは別に、一応付き合ってた子だけど急に周りに結婚するとか言い出して式には出てくれとか俺に言いに来た子もいたな。もちろん単純に羨ましい相手もいたけど」
「うわぁ……」
「だからしばらく彼女いないんだと思ってた。それが、そういう事情があったとは」
「いや、それは思った以上に壮絶だった」

 城野は城野で納得したみたいだけど、こっちはこっちで納得してしまった。そりゃしばらくは結婚とか考えたくないはずだし、恋人のふりを男の俺に頼むはずだ。

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