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時給制ラヴァーズ

第6章 6.雷鳴はまだ遠く

 なんで急に男の恋人案が出てきたのかと思っていたけれど、それなりに色々あったゆえの結果だったのか。

 ……だから恋人関係がご無沙汰で、あの日俺が煽ったせいで性欲が暴走した、とか?
 でも、一緒に生活していて実際見ている慶人はそんなキャラじゃないし、一度きりならまだしも何度もとなるとやっぱり話が違うと思う。
 恋人としてのリアリティを求めた? ……それもピンと来ない。
 大体女の子の代わりにするには俺は身長もあるし、決して細すぎもしないし女顔でもない。もっと適当な相手がいると思うんだ。
 でも、それならやっぱりなんで?

「……それで冒頭の質問に戻るってわけか」
「それはたとえだけどね」
「でも似たようなことがあった、と」
「うーん、まあ、似てるような似てないような」

 雑に考えたたとえだから、状況の説明になっているかと言われれば微妙だ。
 さすがに城野相手といえどこればっかりはあまり詳しいことを言えない。だからどうしたものか首を傾げる俺に、今度は城野が声を潜めた。

「でも手は出されたってことだろ?」
「まあ、結果的には」
「結果的にはって……。大丈夫かお前。その、体とか、心とか」
「ん? 体は最近平気。いやー、慣れるもんだね、何事も」
「……慣れるって、ちょっと待て、一回じゃないのか?」
「あ、余計なこと言った」

 あまり深くなくわかりやすい説明を、と考えていたせいか、ぺろっと本音が漏れてしまって慌てて口を塞ぐ。
 でも遅かった。

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