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時給制ラヴァーズ

第6章 6.雷鳴はまだ遠く

「嘘だろ。まさかあいつがそんな奴だったなんて。待ってろ、まず一発ぶちのめしてから謝らせるから。その後……」
「待って待って待って。誤解してる。無理やりじゃないから」

 愕然としたように呟いて、おもむろに席を立ち上がる城野の服を掴んで止める。まずい。このままじゃ慶人が身の危険にさらされる。
 だから決して城野が思っているような状況ではないですと引っ張って座らせると、めちゃくちゃ怪訝な顔をされた。気持ちはわかる。俺も自分で妙なことを言っている自覚はあるから。

「……無理やりじゃないってことは、それきっかけで実際付き合ったってことか?」
「いやそうでもなく、バイトはバイトで、これはなんか流れでそうなっているだけで」
「……つまり、セフレとか、そういうことか?」
「うーん、そう思われるよね、やっぱ」

 自分で思ってはいるけれど納得出来ていない状態は、城野からしたら大層おかしく見えるのだと思う。
 つまりそれほど俺と慶人の状態は変ということなのだろう。少なくとも普通じゃないのは俺だってわかる。

「それも違うつもりなんだけど、ずばりそこんとこを聞きたいんだよ。俺本当全然わかんなくてさ。慶人はなんで続けてるんだと思う? 言っても俺まだ付き合い浅いし、意外とエロイことが好きとかそういう知らない一面があったり……」
「お前は?」

 なにかしらのヒントが欲しくて、思ったことを垂れ流す俺の言葉を、城野の一言が遮った。
 窺う視線がまっすぐと突き刺さる。

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